後の祭り

 公務員試験予備校の講師を掛け持ちでしていた頃、講師二人一組で模擬面接の面接官役を務めた。講師は業務委託で、普段、他の講師と接する機会がほとんどないので、模擬面接における休息時間は、おしゃべりする絶好の機会だった。

 講義では個人的な意見を言わないけれども、模擬面接の休息時間では講師同士忌憚のない意見交換を行なったものだ。


 私は、平成11年の地方自治法の大改正による地方分権に反対する意見をよく述べた。正直に言えば、地方分権改革を口汚く罵った。


① 世界の潮流は、中央集権化だ。地方分権がそれほど優れているのであれば、諸外国も地方分権を推進するはずだが、そんな国はない。

 国土が広く、人口が多い国であれば、地方分権にも一定の意義があるが、国土が狭く、国土の7割が山林で、残りの3割に1億2千万人がひしめき合って暮らしている現代日本で地方分権を行うのは愚行だ。

 いつの世も、優れた人材は、少数に限られる。如何なる政治体制においても、支配者は、常に少数なのだ(少数支配の原則)。地方分権をすれば、愚かなことをやり出すに決まっている。


② 国から地方への地方分権というのは、要するに、地方公共団体の仕事が増えるということを意味する。財源、人員などのリソースに限りがある以上、地方分権を進めると、地方公共団体が機能不全に陥る。

 事務処理特例条例による都道府県から市町村への権限移譲(いわば都道府県から市町村への地方分権)は、これに拍車をかける結果となる。

 特に町村は、市との違いがほとんどなく(町村では福祉事務所の設置が任意である点が違う。)、市と同じ業務をしなければならないので、町村職員は一人何役もこなさなければならず、ただでさえ大変なのに、これ以上仕事が増えたら、機能不全に陥る可能性が高い。


③ 地方分権推進委員会のメンバーは、極左ばかり。少子高齢化、東京一極集中、インフラの老朽化等により、地方公共団体の財源が不足し、地方公務員も不足することが十分に予想されるにもかかわらず、問題山積の地方分権を推進して、地方公共団体を機能不全に陥れ、日本全体の弱体化を図ることが地方分権の真の狙いだ。


 平成11年(1999年)の地方分権一括法による地方分権改革は、平成5年(1993年)の衆参両院による「地方分権の推進に関する決議」に始まる。

https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/archive/category04/archive-19930603.html

https://www.sangiin.go.jp/japanese/san60/s60_shiryou/ketsugi/126-22.html


 日本の不幸は、国賊が歴代政権を担っていたことだ。極左の策略である地方分権の流れに棹さす総理が誰一人おらず、むしろ積極的に推進していた。

 第78代 宮澤 喜一(平成3年11月5日~平成5年8月9日)

 第79代 細川 護煕(平成5年8月9日~平成6年4月28日)

 第80代 羽田 孜 (平成6年4月28日~平成6年6月30日)

 第81代 村山 富市(平成6年6月30日~平成8年1月11日)

 第82代 橋本 龍太郎(平成8年1月11日~平成8年11月7日)

 第83代 橋本 龍太郎(平成8年11月7日~平成10年7月30日)

 第84代 小渕 恵三(平成10年7月30日~平成12年4月5日)


 下記のような記事を読むと、「それ見たことか!言わんこっちゃない」と思うが、「後の祭り」(時機遅れで、むだなこと。手遅れ。)だ。。。

  嘆かわしいのは、地方分権を推進した国会議員・歴代総理・閣僚・官僚・地方分権推進委員会委員らが誰一人責任を取っていないことだ。恥を知るならば、腹を切るはずだが、恥知らずの馬鹿ばかり。悲しいかな、これが我が国の現状だ。武士たちは、自らの特権を放棄して明治維新を行ったが、こんな国にしたいがためではなかった。




 

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