やはりそれなりの理由があったればこそ少額随契で分割発注していたことが分かった。
最も多かった理由は、「緊急対応」だった。職員研修でいつも触れているのだが、緊急の必要により競争入札に付することができないときには、随契によることができること(緊急随契、地方自治法施行令第167条の2第1項第5号)をご存知なかったようだ。
他の自治体でもあり得るので、下記に転載しておく(8頁)。
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○分割して少額随意契約した理由で最も多かったものは「緊急対応」で109件(約
88%)。その他、「競争入札に付しても応札がないと判断」が 9 件(約 7%)、「修
繕場所が異なる」が4件(約3%)、「工種が異なる」が1件(約1%)、「費用を平準
化」が1件(約1%)であった。
○そのうち「工種が異なる」「費用を平準化」の2件を「合理的理由あり」、残り122
件を「合理的理由なし」と判断した。
○「緊急対応」については、児童生徒や患者、道路利用者等の安全確保といった理
由で分割しているケースが多かったが、緊急性は認められるものの、分割せずに
緊急の5号随意契約等で対応すべき事案であった。
○「競争入札に付しても応札がないと判断」については、事前の聞き取りで複数業
者から対応できないという回答があったことを受けて分割したが、まずは修繕
場所とスケジュールを示して競争入札に付し、応札がなかった場合に随意契約
を検討すべき事案であった。
○「修繕場所が異なる」については、総務省行政評価局が実施した「契約に関する
調査報告書(平成26年1月)」に示されている通り、場所が異なっていても修繕
内容や実施期間等が同じであれば一括して競争入札を実施すべきものであっ
た。
○なお、今回の分割発注において、経済的損失(今回分割した契約金額の合計額が
一括発注していた場合の工事金額(検証工事額)より高くなるケース)は確認さ
れなかった。
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また、上記の記事によると、「市の規則では「なるべく2社以上から見積書を集める」と定められているものの、1つの業者に「他社分も持って来てください」と依頼するなど、複数の不適切な行為も確認された」という。
豊中市財務規則第104条第2項には、「主管部課長は,施行令第167条の2の規定により随意契約を行おうとするときは,なるべく2人以上の者を選んでこれらの者から見積書を徴しなければならない。」とある。
ただでさえ見積書を作成するには、手間と時間がかかるし、見積書を提出しても受注できるとは限らないのに、「他社分ももって来てください」と言われた業者は、なんでライバル企業に頭を下げてライバル企業の見積書まで提出しなければならないのかと途方に暮れるし、業者だからと見下しているのかと怒りさえ覚えながらも、家族のためだと思って歯を食いしばって他社の見積書を集めたのではないか。
長年、豊中市ではこのようなやり方をしていることが業界で知られていたと考えられ、同業者のよしみで、お互いに見積書を融通し合って受注していた可能性も無きにしも非ずだが。
この点、上記報告書には、次のようにある(16頁)。
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○1回目の調査で「依頼したことがある」と回答した職員31人に依頼理由を確認し
たところ、「迅速に対応したかったため」が最も多く、適正な契約手続を遵守する
という意識が希薄であったことが明らかになった。また、「慣例的であった」「上
司や先輩からの指示」と答えた者が複数あり、課や係単位で慣例的に行われて
いたと考えられる。
○1回目の調査の結果で「あるかもしれない」など、不確実な回答が一部あった。正
確性を高めるため、1回目の調査で「ある」と回答した職員に対し2回目の調査を
行った。その結果、9人が「ある」と回答した。ただし、それを裏付ける証拠はない
との回答であった。また、ヒアリングの結果、9人のうち5人は、分割して、その見
積を特定の業者にとりまとめさせていた。
○「自社の見積書と合わせて他社の見積書を本市に提出したことがある」と回答し
た 5 社については、全て、職員からの求めにより他社の見積書を提出しており、
いずれについても、職員と事業者との間での金品等の授受など、癒着を疑われ
る事実は確認されなかった。
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上記報告書の総括も転載しておこう(17頁)。
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分割発注では、人命や健康、公共機能の維持といった緊急対応を理由としたも
のが多数を占めたが、その多くは緊急の5号随意契約などを適用した一括発注が
可能であったと考えられる。
見積徴取では、財務規則において、なるべく2社以上の見積書を徴取することを
規定しているが、依頼業者に見積書の作成を断られる、見積徴取に多くの時間を
要するなどの背景から、迅速に業務を進めたいという思いが働き今回の事案につ
ながったと考えられる。
なお、分割発注も見積徴取も経済的損失や職員と事業者との間での金品等の授
受など癒着を疑われる事実は確認されなかった。
今回の事案については、契約事務に関する職員の理解、認識の希薄さ、ルール
の不明確さ、期限に間に合わせようと焦る気持ちが要因として考えられる。
そういった背景要因はあるものの、今回の事案は、契約事務の原則である競争
性、公平性、透明性に疑念を抱かれるおそれのある不適切な行為であった。
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再発防止に向けた改善策については、18頁以下を参照のこと。