罰則規定がないために解体された指定文化財

 10月1日山陰中央新報デジタルの記事によると、「江戸時代の本陣の一つで出雲市指定文化財「山田家住宅」(出雲市大津町)が所有者によって解体されたことが分かった。市文化財保護条例に取り壊しの罰則規定がなかった。現場は更地になり、市は文化財の指定解除の手続きを進める」そうだ。

 罰則規定がないって本当?と思って調べてみたら、やはりほとんどの自治体が文化財保護条例に罰則規定を設けていた。


 ところが、島根県に限って言えば、罰則規定を設けているのは、島根県、雲南市、邑南町の3自治体だけだった。


 ここからは私の勝手な想像に過ぎないが、文化財に指定されることは名誉なことであり、条例に違反してこれを解体するような不心得者はいないはずだという思い込み(性善説)を前提に、おそらく出雲市は、近隣自治体の文化財保護条例に罰則規定がないので、「じゃ〜ウチも罰則規定なしでいいんじゃね」と思ったか、又は、そもそも罰則規定に考えが及ばず、安易に近隣自治体の条例をコピペしてしまったのではあるまいか。


 文化財に指定されると、所有者に現状変更禁止など様々な制約が課される反面、管理修繕等に補助金が支給されたりするわけで、文化財保護の実効性を確保するためにも、これまで支給した補助金を無駄にしないためにも、罰則規定を設けるべきではないか。


 条例案を作成する際には、近隣自治体の条例だけでなく、全国に視野を広げ、先進的な自治体の条例をベンチ・マークするとともに、安易にコピペするのではなく、地域事情に合わせてアレンジすべきだ。


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