テレビを付ければ、料理人が登場しない日はないと言っても過言ではない。昔は、お昼に主婦向けの料理番組に登場するぐらいだったが、『料理の鉄人』というバラエティ番組以来、料理人がよく登場するようになったと思う。
本来、シェフは、そのお店の唯一の料理長を指し、それ以外の料理人をコックと呼ぶのだが、テレビを見る限り、最近ではただのコックをもシェフと呼ぶことが多いようだ。これが物凄く違和感を覚えるのだ。
学生時代に第二外国語としてフランス語を少し齧(かじ)っただけなので、偉そうなことは言えないのだが、日本では、国家元首、総司令官、社長、部長、課長、家長、駅長、料理長、主任技師、編集長、スポーツチームの主将など、その社会的地位によって呼び方が異なる。
ところが、フランスでは、いずれも、シェフと呼ぶのだ。これに気付いた時は、驚いたものだ。
フランス語chefシェフは、英語chiefチーフと同様に、ラテン語caputカプト「頭」が語源であって、頭(かしら)・頭目(とうもく)という意味だ。
つまり、シェフは、指揮・指導するという機能に着目した言葉なのだ。それ故、国家元首であろうが、課長であろうが、社会的地位の如何にかかわらず、指揮・指導する立場に立つ者として等しくシェフと呼ぶわけだ。
そのため、フランスの厨房では、ヒラのコックを決してシェフとは呼ばず、コックたちを指揮・指導する料理長のみをシェフと呼ぶのだ。
フランスで、指揮・指導する技術の研究が盛んなのも頷ける。
地方公務員向けに、係長になったら読む本などが売られている。これも良いのだが、たまには視点を変えて、フランスの指揮・指導する技術を学んでみるのも何かのヒントになるかもしれない。
とはいえ、コックをシェフと呼ぶ我が国では、需要がないのか、翻訳本がほとんどない。サッカーの指導者教本が翻訳されているぐらいだろうか。
指揮・指導する技術を有する者を育成するということは、すなわちエリート育成を意味する。東大生の官僚離れが世間を騒がす時代だからこそ、フランスのエリート育成法をひとつの参考にしながら、我が国にふさわしい育成法を考案せねばならないのではないか。
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