地方公務員法研修において、有給休暇の官民格差、民間や国にはない特別休暇について、「皆さんは、お客様を選ぶことができませんし、私生活では絶対に関わりたくない人であっても、丁寧かつ忍耐強く接客しなければならないので、ものすごくストレスが溜まるでしょうから、有給休暇の官民格差や、民間や国にはない特別休暇があったって構わないと個人的には考えておりますが、世間の人は違うので、黙っていてください。ネットに書き込んだりすると、公務員叩きが始まって、ご自身の首を絞めることになりますから。」と述べるのが定番だった。
しかし、クレーマー等の客観的なデータがあるわけではなかった。
ところが、「カスタマー・ハラスメント(カスハラ)」という新語が誕生し、世間で問題視されるようになったお蔭で、総務省が自治体職員を対象として初めて調査を行なった。
下記の記事によれば、「単純比較はできないものの、自治体は民間の3倍以上の割合でカスハラを受けている」そうだ。
記事にもあるように、カスタマー・ハラスメントに関する条例を制定する自治体が増えつつある。
某市役所からこの点について相談を受けたことがあるが、下記の3つの理由から、少なくとも市役所職員を対象とした条例を制定する必要はないと回答した。
① カスタマー・ハラスメントの定義自体が曖昧であることもあって、罰則規定を設けている条例がなく、実効性に乏しい。
② カスタマー・ハラスメントと言われる典型的なケースは、刑法上の脅迫罪、強要罪、恐喝罪、暴行罪、傷害罪、公務執行妨害罪等で、それぞれ処罰可能なので、証拠を残すために、しっかり録音・録画し、司直の手に委ねるべきだ。
③ 困難事例については、職員一人で対応せずに、組織で対応するなどの従来通りのクレーマー対応を周知徹底することで十分対応可能だ。
小池都知事のように、カスタマー・ハラスメント条例を制定して、マスコミの注目を集め、有権者に向けて「やっている感」を演出したい首長ばかりだとは思わないが、こんな条例を作っても職員さんを守れなければ意味がないので、担当職員一人に任せきりにせずに、首長以下全職員が毅然たる態度で組織的に対処することが何よりも重要であり、これさえできれば、条例を制定する必要はないのだ。
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