下記の記事によると、「福井県警は11月24日、銃砲や刀剣類の所持許可申請の手数料に関する条例に不備があり、2016~21年の申請者13人(21件)から徴収した手数料計21万7249円(還付加算金含む)を返還すると発表した。銃刀法で定められている徴収対象のうち、現行の条文には狩猟や有害鳥獣駆除などしか記載しておらず、その他の対象者から「根拠なく徴収していた」と判断した。」そうだ。
まず、銃砲刀剣類所持等取締法(略して、銃刀法)第4条第1項各号列記(第1号から第8号まで)に該当する者は、所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに、その所持について、都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
次に、「普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務で特定の者のためにするものにつき、手数料を徴収することができる。」(地方自治法第227条)。
そして、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」(地方自治法第14条第2項)ので、手数料を徴収するには、これを条例に定めなければならない。
また、戸籍抄本や銃砲刀剣類所持許可申請の手数料のように、全国的に統一して定める必要がある標準事務の手数料については、条例で定める手数料の対象となる事務と金額の標準を政令で定めることとされている(地方自治法第228条)。
これを受けて、地方公共団体の手数料の標準に関する政令(平成十二年政令第十六号)が制定され、銃砲刀剣類所持等取締法第四条第一項の規定に基づく銃砲又は刀剣類の所持の許可の申請に対する審査については、
「イ 銃砲刀剣類所持等取締法第四条第一項第一号の規定による猟銃又は空気銃の所持の許可を現に受けている者に対する同号の規定に基づく許可の申請に係る審査 六千八百円(当該申請を行う者が当該都道府県において同時に他の同号の規定に基づく許可の申請を行う場合における当該他の同号の規定に基づく許可の申請に係る審査にあっては、四千三百円)
ロ その他の者に対する許可の申請に係る審査 一万五百円(当該申請を行う者が当該都道府県において同時に他の同項の規定に基づく許可の申請を行う場合における当該他の同項の規定に基づく許可の申請に係る審査にあっては、六千七百円)」
と定められている(地方公共団体の手数料の標準に関する政令第66項。下線:久保)。
そこで、福井県は、福井県公安委員会等手数料徴収条例第2条に基づいて、銃砲刀剣類所持許可申請の手数料を徴収している。
ところが、福井県公安委員会等手数料徴収条例別表には、「銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号。以下この表において「法」という。)第四条第一項第一号の規定に基づく猟銃または空気銃の所持の許可を現に受けている者以外の者に対する同号の規定に基づく許可の申請に対する審査」とあるのだが(ゴシック体・下線:久保)、正しくは「同項の規定」と記載すべきなのに、誤って「同号の規定」に限定されている。
そのため、条例上、銃刀法第4条第1項第1号の許可申請については手数料を徴収することができるが、銃刀法第4条第1項第2号から第8号までの許可申請については手数料を徴収することができないことになっている。
それにもかかわらず、福井県は、これまでこの誤りに気付かずに、銃刀法第4条第1項第2号から第8号までの許可申請について手数料を徴収していたというわけだ。
私も誤入力することがあるので、偉そうなことは言えないのだが、条例案等を作成する場合には、何重にもチェックしていただきたい。
もちろん、福井県も何重にもチェックしておられると思うのだが、そもそも福井県公安委員会等手数料徴収条例別表の表現の仕方が分かりにくいので、チェックをすり抜けてしまったように思えるのだ。
例えば、京都府警察手数料徴収条例施行規則( 平成12年3月30日規則第5号) 別表第1(第2条関係) は、
「30 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号)第4条第1項の規定による銃砲又は刀剣類の所持の許可の申請に対する審査
(1) 同項第1号の規定による猟銃又は空気銃の所持の許可を現に受けている者に対する許可の場合
(2) その他の者に対する許可の場合」
と分かりやすく表現している(ゴシック体・下線:久保)。地方公共団体の手数料の標準に関する政令第66項を参考にしているにすぎないが。
上記記事によれば、「県警は条例改正案を30日開会の県議会に提案する。」そうだが、参考にしてほしい。
cf.1銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)
(許可)
第四条 次の各号のいずれかに該当する者は、所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに、その所持について、住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
一 狩猟、有害鳥獣駆除又は標的射撃の用途に供するため、猟銃又は空気銃(空気けん銃を除く。)を所持しようとする者(第五号の二に該当する者を除く。)
二 人命救助、動物麻酔、と殺又は漁業、建設業その他の産業の用途に供するため、それぞれ、救命索発射銃、救命用信号銃、麻酔銃、と殺銃又は捕鯨砲、もり銃、捕鯨用標識銃、建設用びよう打銃、建設用綱索発射銃その他の産業の用途に供するため必要な銃砲で政令で定めるものを所持しようとする者
三 政令で定める試験又は研究の用途に供するため必要な銃砲を所持しようとする者
四 国際的な規模で開催される政令で定める運動競技会のけん銃射撃競技又は空気けん銃射撃競技に参加する選手又はその候補者として適当であるとして政令で定める者から推薦された者で、当該けん銃射撃競技又は空気けん銃射撃競技の用途に供するため、けん銃又は空気けん銃を所持しようとするもの
五 国際的又は全国的な規模で開催される政令で定める運動競技会における運動競技の審判に従事する者として適当であるとして政令で定める者から推薦された者で、当該運動競技の出発合図の用途に供するため、運動競技用信号銃又はけん銃を所持しようとするもの
五の二 年少射撃資格者に対する政令で定める運動競技会の空気銃射撃競技のための空気銃の射撃の指導に従事する射撃指導員で、当該指導の用途に供するため空気銃を所持しようとするもの
六 狩猟、有害鳥獣駆除、と殺、漁業又は建設業の用途に供するため必要な刀剣類を所持しようとする者
七 祭礼等の年中行事に用いる刀剣類その他の刀剣類で所持することが一般の風俗慣習上やむを得ないと認められるものを所持しようとする者
八 演劇、舞踊その他の芸能の公演で銃砲(けん銃等を除く。以下この項において同じ。)又は刀剣類を所持することがやむを得ないと認められるものの用途に供するため、銃砲又は刀剣類を所持しようとする者
九 博覧会その他これに類する催しにおいて展示の用途に供するため、銃砲又は刀剣類を所持しようとする者
十 博物館その他これに類する施設において展示物として公衆の観覧に供するため、銃砲又は刀剣類を所持しようとする者
2 都道府県公安委員会は、銃砲又は刀剣類の所持に関する危害予防上必要があると認めるときは、その必要の限度において、前項の規定による許可に条件を付し、及びこれを変更することができる。
3 第一項第四号の政令で定める者が行う推薦は、国家公安委員会規則で定める数の範囲内において行うものとする。
4 第一項第四号、第八号及び第九号の規定による許可は、政令で定めるところにより、期間を定めて行うものとする。
5 法人が第一項に掲げる業務のため代表者又は代理人、使用人その他の従業者に銃砲又は刀剣類を所持させようとする場合においては、現に銃砲又は刀剣類を所持しようとする法人の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、法人の事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
cf.2福井県公安委員会等手数料徴収条例(平成十二年三月二十一日福井県条例第三十号)
(手数料の納付)
第二条 別表の上欄に掲げる事務に係る申請、出願その他の行為(以下「申請等」という。)をしようとする者は、当該事務の区分に応じ、それぞれ同表の中欄に掲げる名称の手数料を納付しなければならない。この場合において、当該手数料の額は、それぞれ同表の下欄に掲げる額とする。
2 前項の手数料の額は、別表の下欄に特別の計算単位の定めがあるものについてはその計算単位について、その他のものについては一件についての額とする。
別表(第二条、第三条関係)
一 生活安全部関係
<追記>
福井県議会第419回(令和3年12月)定例会において、第96号議案「福井県公安委員会等手数料徴収条例の一部改正について」が全会一致で原案通りに可決され、同年12月28日公布された。施行日は、令和4年3月15日だ。
cf.3福井県報 号外第75号(令和3年12月28日)
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/koukaihou/fukuikenpou/kenpoutop_d/fil/008.pdf
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