随分前から、「ごとに」と「おきに」の違いが話題になっていた。
①電車は、10分毎に来ます。
②電車は、10分おきに来ます。
①と②は、電車が10分に1本来るという意味になる。
では、次の場合は、どうだろうか?
③1週間毎に病院へ行きます。
④1週間おきに病院へ行きます。
③と④は、意味が異なる。
③は、1週間に1回病院へ行くという意味だが、④は、2週間に1回病院へ行くという意味になる。
この点、NHK放送文化研究所のメディア研究部・放送用語 塩田雄大氏は、次のように述べている。
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「分、秒」のように小さい単位と、「日、週間、月、年、世紀」のように大きい単位とで、解釈が違ってくるようなのです。そして、その中間に位置する「1時間おきに」は、両方の解釈が生まれてしまうのではないでしょうか。
いずれにせよ、放送で使う場合には、誤解を避けたいものです。その点で「~ごとに」は誤解の余地がないので、「1時間ごとにサイレンが鳴ります」あるいは「2時間ごとにサイレンが鳴ります」のように、場合によっては言い方を工夫することも必要でしょう。
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法制執務においては、なによりも誤解を避けなければならないから、「おきに」を用いないのが妥当だろう。
この点、条例Webアーカイブデータベースで「おきに」を検索したところ、「おきに」を訓令等に用いているものが35件あったが、「ごとに」に改めるのが無難だ。
では、そもそも「分、秒」と、「日、週間、月、年、世紀」とで、「おきに」の解釈が違ってくるのはなぜなのか?
ずっと不思議だったのだが、下記の記事にヒントがあった。
この数学者の見解に従えば、我々日本人は、「分、秒」を連続数として捉え、「日、週間、月、年、世紀」を分散数として捉えているから、「おきに」の解釈が違ってくるわけだ。
おそらく我々日本人は、もともと「日、週間、月、年」を分散数として捉えていたのだろう。
しかし、明治5年に明治政府がそれまで使っていた太陰太陽暦か ら太陽暦への改暦を公布し、その際、時刻制度も不定時法から現行の24時間制の定時法へ変更したことがきっかけに、江戸時代の時計が役立たなくなったため、海外から柱時計や懐中時計が輸入された結果、新たな概念である「分、秒」が用いられるようになった。
これらのアナログ式の時計は、時計の針(分針、秒針)がぐるぐると回っているので、「分、秒」を連続数として捉えるようになったのではあるまいか。
その結果、「分、秒」と、「日、週間、月、年、世紀」とで、「おきに」の解釈が異なるようになったと考えられる。
そして、「時」は、明治以前から用いられていたので、おそらく分散数として捉えられていたであろうが、海外製のアナログ式時計が普及するにつれて、時針がぐるぐると回るので、「時」を連続数として捉える人が出てきたことから、「分、秒」と「日、週間、月、年」の中間に位置する「1時間おきに」の解釈が分かれるようになったのではあるまいか。
長年の疑問が解けて、スッとした!
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