「ごとに」と「おきに」

 随分前から、「ごとに」と「おきに」の違いが話題になっていた。


①電車は、10分毎に来ます。

②電車は、10分おきに来ます。


 ①と②は、電車が10分に1本来るという意味になる。


 では、次の場合は、どうだろうか?


③1週間毎に病院へ行きます。

④1週間おきに病院へ行きます。


 ③と④は、意味が異なる。

③は、1週間に1回病院へ行くという意味だが、④は、2週間に1回病院へ行くという意味になる。


 この点、NHK放送文化研究所のメディア研究部・放送用語 塩田雄大氏は、次のように述べている。

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 「分、秒」のように小さい単位と、「日、週間、月、年、世紀」のように大きい単位とで、解釈が違ってくるようなのです。そして、その中間に位置する「1時間おきに」は、両方の解釈が生まれてしまうのではないでしょうか。

  いずれにせよ、放送で使う場合には、誤解を避けたいものです。その点で「~ごとに」は誤解の余地がないので、「1時間ごとにサイレンが鳴ります」あるいは「2時間ごとにサイレンが鳴ります」のように、場合によっては言い方を工夫することも必要でしょう。

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~おきに | ことば(放送用語) - 最近気になる放送用語 | NHK放送文化研究所

Q:コメントで「1時間おきにサイレンが鳴ります」と書いたら、あいまいだと指摘されました。A:「~おきに」という表現は、人によって受け取り方が違ってくる場合があるので、注意が必要です。解説:なぜあいまいだと言われたのか、その理由について考えてみましょう。いま、1回目のサイレンが鳴ったのが午前9時だったとします。「1時間おきに」だとしたら、次は何時でしょうか。「10時」と考える人が多いのですが、「11時」と答える人もいるのです。なぜ2つの解釈が出てくるのでしょうか。いろいろな要因がありそうなのですが、その1つとして、「~時間」などの「助数詞」の部分の違いが考えられそうです。* 「1秒おきに画面がかわります」 * 「山手線は1分おきに来ます」この場合、ほとんどの人は「毎秒」「毎分」と同じ意味だと考えるでしょう。では、* 「1日おきに船が来ます」* 「1週間おきに通院しています」* 「ひと月おきに試験があります」* 「1年おきにすい星がやって来ます」* 「1世紀おきに大地震があります」この場合はどうでしょうか。多くの人は「2日に一度」「2週間に一度」「ふた月に…」というように考えるのではないでしょうか。これは正直なところまだ研究の途中なのですが、「分、秒」のように小さい単位と、「日、週間、月、年、世紀」のように大きい単位とで、解釈が違ってくるようなのです。そして、その中間に位置する「1時間おきに」は、両方の解釈が生まれてしまうのではないでしょうか。いずれにせよ、放送で使う場合には、誤解を避けたいものです。その点で「~ごとに」は誤解の余地がないので、「1時間ごとにサイレンが鳴ります」あるいは「2時間ごとにサイレンが鳴ります」のように、場合によっては言い方を工夫することも必要でしょう。

www.nhk.or.jp

 法制執務においては、なによりも誤解を避けなければならないから、「おきに」を用いないのが妥当だろう。

 この点、条例Webアーカイブデータベースで「おきに」を検索したところ、「おきに」を訓令等に用いているものが35件あったが、「ごとに」に改めるのが無難だ。



 では、そもそも「分、秒」と、「日、週間、月、年、世紀」とで、「おきに」の解釈が違ってくるのはなぜなのか?


 ずっと不思議だったのだが、下記の記事にヒントがあった。

 この数学者の見解に従えば、我々日本人は、「分、秒」を連続数として捉え、「日、週間、月、年、世紀」を分散数として捉えているから、「おきに」の解釈が違ってくるわけだ。


 おそらく我々日本人は、もともと「日、週間、月、年」を分散数として捉えていたのだろう。


 しかし、明治5年に明治政府がそれまで使っていた太陰太陽暦か ら太陽暦への改暦を公布し、その際、時刻制度も不定時法から現行の24時間制の定時法へ変更したことがきっかけに、江戸時代の時計が役立たなくなったため、海外から柱時計や懐中時計が輸入された結果、新たな概念である「分、秒」が用いられるようになった。


 これらのアナログ式の時計は、時計の針(分針、秒針)がぐるぐると回っているので、「分、秒」を連続数として捉えるようになったのではあるまいか。


 その結果、「分、秒」と、「日、週間、月、年、世紀」とで、「おきに」の解釈が異なるようになったと考えられる。


 そして、「時」は、明治以前から用いられていたので、おそらく分散数として捉えられていたであろうが、海外製のアナログ式時計が普及するにつれて、時針がぐるぐると回るので、「時」を連続数として捉える人が出てきたことから、「分、秒」と「日、週間、月、年」の中間に位置する「1時間おきに」の解釈が分かれるようになったのではあるまいか。


 長年の疑問が解けて、スッとした!

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