自分の勤め先の条例ぐらい読もうよ <追記1,2,3,4,5>

 毎年、どこかの自治体で条例の定めに違反して議会の議決を経ずに違法に契約を締結する事例が発生している。


 下記の記事によると、東京都の小平市で2015年度、2020年度、2024年度に小学校の「教師用指導書」を購入した際に、条例の定めに違反して議会の議決を経ずに約9200万円余りを支出していたそうだ。


 近隣の小金井市から議会の議決の有無に関する問い合わせで発覚したらしいのだが、なぜ問い合わせをするのだろうか。

 「小平市と同様のケースは、過去にも東京都中野区(2011年)などで発覚。今年に入ってからも都内では武蔵野市(約2200万)や府中市(約7855万)で発覚している。」ことが影響しているのだろうか。

 「教師用指導書」が動産であり、条例で定められた金額を超える場合には、議会の議決が必要だと判断をすることは、誰にでも簡単にできることであって、なぜわざわざ他市へ問い合わせをするのか、理解できない。


 いずれにせよ、他市からの問い合わせで発覚したというのは、みっともない話ではある。「法の不知はこれを許さず」を肝に銘じてほしいと思う。

 条例で定められた金額を暗記する必要はないが、一定金額の契約には議会の議決が必要だということさえ覚えておけば、高額な契約を締結する際に、「え〜っと、議会の議決が必要な一定の金額っていくらだっけ?」という疑問が生じ、条例を確かめることができるようになるはずだ。


 通常の契約は、長が地方公共団体を代表して締結できるが(地方自治法第147 条)、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める一定の契約については、議会の議決が必要になる(地方自治法第96 条第1項第5号・第8号、地方自治法施行令第121条の2の2、別表第3・第4)。  


 これは、既に成立している契約に対して、議会が事後的に承認を与えるという意味ではなく、長に対して新たに契約締結権限を与えるものである。

 条例で定める一定の契約は地方公共団体の大きな財政負担となるので、契約の基本的な事項の適否を議会にチェックさせる趣旨だ。


  従って、この場合には、一般には契約の目的、契約の相手方、契約金額、契約の方法等が議案の内容になり、議案には工事請負契約書を添付する必要は別になく(行政実例昭 25.12.28)、議会に修正権はない(行政実例昭 29.6.21)。 長は、落札者等とあらかじめ仮契約を締結した上で、議会の議決を待ち、議決後に本契約を締結することになる。


 小平市の場合には、小平市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例(昭和38年条例第3号)第3条で「地方自治法第96条第1項第8号の規定により、議会の議決に付さなければならない財産の取得又は処分予定価格2,000万円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については、1件5,000平方メートル以上のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払いとする。」と定められているので、小学校の「教師用指導書」の代金が2,000万円以上の場合には、議会の議決が必要ということになる。


 議会の議決を経ないで行われた動産買入契約は、無効になるが(最判昭35.7.1)、取引の安全を図るため、その無効は絶対的なものではなく、事後的に議会が追認の議決をすると、民法第116条の類推適用により、行為当時に遡(さかのぼ)って有効になると解されている。


<追記>

 埼玉県和光市でも同様の事件が発覚した。

<追記>

 埼玉県新座市でも発覚した。

<追記>

 埼玉県ふじみ野市でも発覚した。

<追記>

 埼玉県富士見市でも発覚した。

<追記>

 愛知県弥富市でも発覚した。

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