AI裁判官

 情報管理機関を設置し、民事訴訟及び行政事件訴訟の全判決を個人名などプライバシーに配慮した上でデータベース化し、利用者に提供するそうだ。

 これは、ありがたい。裁判所のサイトにアップロードされていないけど、重要な判決が少なからずあるからだ。

 刑事訴訟についても、実現してほしいものだ。


 もっとも、膨大な判決の海に翻弄される可能性があり、先例的価値のある判決を見つけ出すのに苦労しそうだ。少額訴訟の判決がダーッと列挙されて、知りたい情報にアクセスしづらく、イラッとしそうな気がする。AIが助けてくれるようになるだろうが。


 他方で、例えば、条理など法の一般原則に基づいて下された判決がどれだけあるのか、年度別・管轄別・裁判官別に分析することが可能になるだろうから、法学研究の発展につながる。


 さらに、AIに全判決を学習させることにより、サードパーティ製のAI裁判官が登場し、模擬判決をさせることによって、同様の事案について同様に解決することが可能になる。これにより予測可能性を確保し、訴訟リスクを回避することも可能になる。この意味で、判例法主義的傾向が強まる可能性がある。


 裁判官も、AI裁判官を活用することにより、事務処理を効率化させられる一方で、裁判の画一化が進み、事案に応じたきめ細かな具体的妥当性を追求することが軽視される傾向が生まれるおそれもある。


 なんにせよ、早ければ2026年度から運用が開始されるそうだから、今から楽しみだ。


源法律研修所

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