ジェームズ・クラベルの小説『Shōgun』を原作とした1980年のアメリカ制作のテレビドラマ『将軍 SHŌGUN』は、三船敏郎、島田陽子などの日本人俳優が出演していることもあって、大きな話題になった。
リアルタイムで見たが、時代考証が酷すぎるし、日本人を差別し、日本の歴史や文化に対する敬意はもちろん理解すらなく、日本人を馬鹿にしているのかと怒りさえ覚えた。
さて、真田広之主演・プロデューサーのドラマ『SHOGUN 将軍』がエミー賞18冠を達成したことが連日話題になっている。
視聴していないので、なんとも言えないが、報道によると、前作よりもマシになったらしい。真田広之がプロデューサーとして演出等に口出しができたからだろう。
受賞は大変喜ばしいのだが、下記の記事の写真を見る限りでは、刀の下緒(さげお)をぶらぶらさせているのは残念だ。
日本の時代劇でも、下緒をぶらぶらさせているから、誰もこれがおかしいとは思わなかったのだろう。
刀の下緒は、刀の鞘(さや)が抜け落ちないように、着物の帯に結びつけて固定するための道具であって、ぶらぶらさせる物ではない。
もし鞘を下緒で帯に固定させていないと、戦闘中に鞘を紛失したり、背後から刀の鞘を引き抜かれて、慌てて抜刀すれば、帯が斬れてしまい、袴(はかま)がずり落ちて足元を取られ、敵に斬り殺されてしまう。
そこで、鞘を下緒で帯に固定させるわけだ。
上記記事の写真を見れば、明らかだが、鞘を固定させていないため、刀の座りが悪く、武士を演じる俳優たちの刀を差した姿が様になっていない。大小二振りの刀の角度に注目すれば、俳優によってバラバラだから、私が言っている意味が分かるはずだ。
『SHOGUN 将軍』の制作スタッフや俳優の中に、武士の子孫が一人でもいたら、たんたん狸侍は登場しなかっただろう。
なお、江戸時代になると、刀の鞘に返り角(つの)と呼ばれるフックが付けられるようになり、このフックを帯に引っ掛けるようになったので、無用になった下緒を鞘に結び付けるようになった。結び方も次第に見栄えのする派手なものに変わった。
母方の祖父(旧薩摩藩士、竹内流免許皆伝、日銀に勤めながら警察で柔道を教えていた。)に習った竹内流の捕縛術では、下緒でもその辺の紐でもよいのだが(下緒は、刀の鞘に取り付けられた栗形(くりがた)と呼ばれる部品の穴に通しているだけだから、サッと引っ張り出すことができる。)、二つの輪っかを作って(1、2秒で出来る。)、後ろ手にした敵の手首にそれぞれ輪っかを通して締め上げ、首に二重に下緒を回して、縛られた両手首の間にくぐらせて締め上げた上で(縛られた両手首が肩甲骨の下あたりに吊り上げられた状態になる。)、下緒を結べば、敵が下緒を解こうとすると首が絞まるので、解けない。下緒がもっと長ければ、その状態でさらに二の腕あたりで体をぐるぐる巻きに縛ることができ、なお良い。技を覚えるために、祖父に縛られたが、解くことは不可能だ。
このように下緒は、刀を固定するだけでなく、敵を捕縛したり、止血したり、兜の緒が切れた場合に代用したりするなど、多用されたが、天下泰平の江戸時代には、鞘に結びつけたただの飾りになってしまった。
幕末の武士の写真を見ると、返り角で帯に引っ掛けて下緒をぶらぶらさせている者もいるが、下記の写真のように、古式に則って脇差の下緒を帯に結びつけている者もいる。
3人で写っている侍の右端と中央の人は、大刀に下緒を結びつけているが、左端の人は、鞘に結び付けておらず、古式に則って帯に結んでいたと思われる。
下緒以外にも、おそらく違和感を覚えることがたくさんあると思う。地上波で放送されたら、見るだろうが、わざわざお金を出して見ようとは思わない。
<追記>
たんたんたぬきの金玉は 風もないのに ぶ〜らぶら♪
という歌をいつどこで誰に習ったのかは、すっかり忘れてしまった。幼稚園か小学校低学年の頃だったと思う。
今回、調べてみて初めて知ったのだが、元歌は、1864年にアメリカの牧師Robert Lowryロバート・ローリーが作詞作曲した讃美歌(聖歌687番 Shall We Gather at the River 邦題:まもなくかなたの)だそうだ。
カントリー調もいいね♪
日本に移入されて下ネタにされているとアメリカ人が知ったら、怒り出しそうだ!笑
アメリカ人が作ったテレビドラマの悪口は言えないな。。。
ちなみに、この歌は、さらに替え歌としてビッグカメラのCMソングになっている。
<追記>
悪い予感が当たった。下緒だけでなく、下記の記事によると、いろいろ違和感を覚えることがあるらしい。
真田広之は、様々な制約の中で精一杯リアリティを追求したのだろうと思うし、これに敬意を表するにやぶさかではないが、あまりリアルだと強調するのは慎んだ方がよい。日本が誤解されるおそれがあるからだ。
せめてルイス・フロイスなどの宣教師が書いた本ぐらいは読んでほしかった。そうすれば、記事にあるようないい加減な描写をしなかっただろう。
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