5月、長崎県大村市は、男性同性カップルの希望を受け、1人を「世帯主」とし、もう1人を「夫(未届)」と記載して住民票を交付した。
これに対して、9月27日、総務省は、「夫(未届)」「妻(未届)」という続柄は「内縁の夫婦(事実婚)が《法律上の夫婦》と社会保障の面で同じ扱いを受けているので記載している」とし、社会保障の面で同じ扱いを受けていない同性カップルと内縁の夫婦の「続柄の記載」を同じにすると「実務上の支障をきたすおそれがある」、「(住民票は)できる限り統一的に記録が行われるべきもの」という1999年の最高裁判決を引用して、大村市の住民票の記載は「最高裁判決と異なる認識を前提にしている」として「改めてご判断いただきたい」との考えを伝えた。
この総務省の「技術的な助言」に対して、大村市の園田裕史市長は、「社会保障制度は、続柄だけで適用するかどうかを判断していないし、窓口や所管機関もそういった手続や事務処理はしていない」、「(国が定めた住民基本台帳)事務処理要領の中身自体が、判断に至る根拠に時代が変わってなってないんじゃないかと思うところがあるので、その部分は逆に修正をご検討いただきたい」などとして「特段の修正等を行わない」との考えを示した。
大村市によると、全国の4分の1以上にあたる400以上の自治体がパートナーシップ宣誓制度を導入しており、12の自治体が同性カップルの住民票記載について大村市と同様の対応を検討または方向性を決定しているらしい。
う〜ん、現行法上、大村市に軍配を上げざるを得ない。
住民票は、住民の居住関係を公証する制度であって、住民基本台帳に関する事務は、市町村の自治事務だ(地方自治法第13条の2)。
そもそも平成11年の地方自治法改正前の機関委任事務ですらなく、もともと自治事務だった。
住民基本台帳法第1条は、「住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする」と定めている。
住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳事務は、あくまで自治事務だから、国の行政の合理化に資すること自体は、第一次的な目的ではなく、住民に関する記録を正確かつ統一的に作成すれば、選挙人名簿の登録等が国政選挙でも活用されるので、国の行政の合理化にも資するという第二次的な目的だと考えられる。
住民基本台帳事務が「全国的に統一して定めることが望ましい」・「全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない」ものだとすれば(地方自治法第1条の2第2項)、それは国の事務として位置付けられるべきはずだが、自治事務として位置付けられていることから、全国的な統一性よりも、「地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるように」設計されていると考えられる。
しかも、「自治事務である場合においては、国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない」とされているので(地方自治法第2条第13項)、住民基本台帳事務については、国は、地域の特性に応じた処理が行えるように特に配慮しなければならない。
それ故、国は、大村市がパートナーシップ宣誓制度を導入しているという地域の特性に応じた処理が行えるよう特に配慮しなければならないことになる。
以上、要するに、住民基本台帳事務は、大村市の自治事務である以上、他人である国からとやかく言われる筋合いはなく、国は、法的拘束力のない単なるお願いにすぎない技術的助言しかできない。
大村市が技術的助言に従わない以上、総務省としては、お手上げということになる。
その結果、シロアリによって家が崩壊するが如く、異性婚を当然の前提とする婚姻制度がなし崩しにされ、憲法上も法律上も認められていない同性婚が既成事実として積み上げられていくことになる。
同性婚もいわゆる選択的夫婦別姓も、婚姻制度・家族制度を破壊することが真の目的であることは、マルキストが公言しているのに、この手の記事にはこれに一切触れずに、国の不当性を訴え、同情心を買うことに終始している。マスコミもグルだ。
シロアリ退治をするためには、住民基本台帳事務を法定受託事務にするか、又は、法定自治事務について法定受託事務と同様の強い関与を認めるかせねばならず、いずれにせよ法改正を必要とする。。。
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