外国人の運転免許

 私は、超が付くほどの方向音痴だ。学生時代、自動車の運転免許を取ろうと思ったら、家族・友人たちが猛反対した。迷子になるだけでなく、「ここどこ?」とキョロキョロしているうちに事故を起こすに決まっている、というのだ。

 失礼な!!、と思ったが、当時はカーナビゲーションがなかったから、迷子になることは間違いないので、免許を取ることを諦めた。

 そのため、運転免許のことがよく分からない。これから述べることが間違っているかもしれないので、あらかじめお詫び申し上げる。


 さて、下記の記事によると、中国の運転免許証をもつ中国人観光客が、学科試験(10問中7割以上)・技能試験(合格率30%)に合格することにより、日本の運転免許に切り替えることができるため、午前5時から東京都内の運転免許試験場に行列を作っているらしい。


 ジュネーブ交通条約に加盟していない中国の運転免許では国際運転免許を取得できるのは10か国ぐらいだが、ジュネーブ交通条約に加盟している日本の運転免許に切り替えれば、100か国近くの加盟国で国際運転免許を取得できるからだそうだ。

 日本の免許がない方が日本で自動車等を運転するための方法


 外国の運転免許から日本の運転免許の切り替え手続ってあるんだね。初めて知った。外国の運転免許を受けている者(ただし、外国の運転免許を受けた後、 その国に通算して3か月以上滞在してい たことが条件)は、日本の運 転免許試験の一部(学科試験、技能試験)が免除され、日本の運転免許を取得することができる(道路交通法第97条の2第3項)。


 調べてみると、中国は、日本の運転免許試験の一部免除の特例適用対象国ではないから、通常の運転免許試験に合格しなければならない。


 ところが、上記の記事には、「自動車生活ジャーナリスト・加藤久美子さんは「(筆記試験は)日本人が受ける免許の筆記よりかは(問題の)数は10分の1以下ですし、引っかけ問題みたいな難しいとかはそんなにない」」とあるので、なぜか中国人に対して易しい試験を実施しているようだ。

 中国人だけなのかどうかは、定かではないが、いずれにせよ、これってどうなん?


 まあ、中国人観光客が、下記の記事にある偽造の国際運転免許証を買って運転し、事故を起こすよりはマシだが。

 もう一つ気になることがある。

 ジュネーブ交通条約に加盟していない中国人が日本の運転免許に切り替えれば、加盟国で国際運転免許を取得できるというのは、日本の運転免許が悪用されているようで、なんだか釈然としない。


 そこで、ジュネーブ交通条約を読んでみた。


 第24条第1項は、「締約国は、自国の領域への入国を許可された運転者で、附属書八に定める条件を満たしており、かつ、他の締約国若しくはその下部機構の権限のある当局又はその当局が正当に権限を与えた団体から、適性を有することを実証した上で、発給を受けた有効な運転免許証を所持するものに対し、附属書九及び附属書十に規定する種類の自動車でその運転免許証の発給の対象となっているものを、新たな試験を受けることなく、自国の道路において運転することを認めるものとする。」と定めている(下線:久保)。


 「自国の領域への入国を許可された運転者」とあるだけで、「自国の領域への入国を許可された加盟国の運転者」とは定められていないから、非加盟国の中国人も日本の運転免許に切り替えれば、加盟国で国際運転免許を取得できるわけだ。


 これが条約の盲点なのか、それとも想定済みなのかは、専門外なので分からない。国際運転免許について、詳しい方がいらっしゃったら、ご教授ください。


 中国人観光客による交通事故がたびたび報道されていることに鑑(かんが)みると、少なくとも日本の運転免許への切り替え手続として実施される学科試験と技能試験を日本人が運転免許を取得する場合と同レベルにすべきだろう。


 ちなみに、中国の運転免許から日本の運転免許に切り替えても、もともと日本の運転免許証には国籍が記載されていないので、中国国籍は記載されない。

 日本では、運転免許証が身分証明書代りに使われているので、日本人へのなりすましにも悪用される可能性がある。運転免許証には中国名が記載されるが、「ワタシ日本に帰化したネ。日本人アル」と言うだろう。

 運転免許証に国籍を表記させるべきだろう。


 




 

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