和歌山県上富田町の建設課が管理する町有地(宅地)を同課職員が購入したそうだ。「買い受け人を2023年8月に公募したが、応募がなかった。その後、随時募集での販売とし、同課職員が24年1月に申し込みをし、2月に売買契約を結んだ。他の課へ異動した4月1日に代金を支払い、登記したという。」
「職員が購入を決めた経過について、随時募集でも応募がなく、町有地は急傾斜地崩壊危険区域に入っているなど売却は難しいと判断し、宅地造成事業の累積赤字や単年度黒字継続のため、少しでも足しになればという考えからだった」。
住むのに危険な宅地をわざわざ町のために購入したのか〜。上司たちに貧乏くじを引かされたのではなく、自発的に購入したのであれば、郷土愛に溢れる御仁なのだろう。
しかし、「担当課は町要綱の把握や地方自治法の確認に至っていなかった」というのは、お粗末。
知っていれば、不動産屋に一旦譲渡させてから購入するとか、一時的に当該職員を異動させてから購入させるとか、地方自治法第238条の3第1項に抵触しないような工夫ができただろうに。
しかも、町長は、「公有財産の譲り受けについて、単に契約を結ぶことではなく、所有権の移転を伴う財産移転が譲り受けであると考えるとし、職員が異動後に所有権移転、登記をしているので、公有財産の事務に従事しておらず、違法ではない」と述べている。
しかし、売買契約を締結した時点で所有権が移転するので、地方自治法第238条の3第1項に違反し、当該売買契約は、同法同条第2項により無効になる。
適正価格での売買であり、町に損害はなく、むしろ「宅地造成事業の累積赤字や単年度黒字継続のため」に役立っているわけで、法律を振り回すのは心苦しいが、違法なものは違法だ。
さらに、町長が言うように違法ではないのであれば、購入した職員を訓告、他の2人の担当課職員を厳重注意にする必要がないし、また、町長と副町長の給与を減額する必要もないはずだ。
珍しいケースなので、備忘録として記事のリンクを貼っておく。
cf.1地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)
(職員の行為の制限)
第二百三十八条の三 公有財産に関する事務に従事する職員は、その取扱いに係る公有財産を譲り受け、又は自己の所有物と交換することができない。
2 前項の規定に違反する行為は、これを無効とする。
cf.2上富田町普通財産売払事務取扱要綱 (平成29年1月24日 要綱第3号)
(買受者の制限)
第5条 次の各号のいずれかに該当する者は、普通財産の買受をすることができない。
(1) 地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第238条の3第1項に規定する公有財産に関する事務に従事する職員
(2) 施行令第167条の4第1項の規定による制限を受ける者
(3) 施行令第167条の4第2項各号のいずれかに該当する者で、当該各号に該当する事実があった日から2年を経過していない者
(4) 会社更生法(平成14年法律第154号)の適用を申請した者で、同法に基づく裁判所からの更生手続開始の決定がされていない者
(5) 上富田町暴力団排除条例(平成23年条例第20号)に規定する排除措置対象者
(6) 町税等を滞納している者
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