世界最古の漢字辞典『説文解字』によれば、「倭は順(しなやか)なる貌(すがた)なり。人に従い委の声」とあるので、この漢字自体には、悪い意味はない。


 7世紀以前に、支那人は、日本のことを指して「倭」と呼んでいたが、その理由については、日本語の一人称が「わ」(吾)だからだという説が有力だ。低姿勢だったからだとか、身長が低かったからだとか、諸説あり、門外漢の私には判断しかねる。


 理由はなんにせよ、支那の冊封体制において、「倭」は、支那の皇帝に朝貢して臣下の礼を尽くしていた。


 しかし、これは、屈辱だった。


 そこで、『旧唐書』(くとうじょ)によれば、「日本国は倭国の別種なり、其(そ)の国日辺に在るを以(も)って名となす。或(あるい)は曰(いわく)。倭国自ら其の名の雅ならざるを悪(にく)み、改めて日本と為す。或は云(い)う。日本は旧小国、倭国の地を併す」とあるように、支那の冊封体制と密接不可分の「倭」という屈辱的な国号を「日本」に改め、聖徳太子以降、日本の天皇(天子)と支那の皇帝(天子)は対等であって、一度たりとも天皇が皇帝の臣下となったことはない。


 ところで、「奈良県が10月に開くKポップライブなど韓国との音楽交流イベントを巡って県議会の自民党系会派内で対立があり、イベントに肯定的な所属県議6人が24日、会派を離脱し、新会派の結成届を議会に提出した。」

 この自民党系新会派の名称が、なんと「自民党倭」だそうだ。「倭」と書いて、「やまと」と読ませている。

 確かに、7世紀、「倭」と書いて、「やまと」と訓じてきたが、前述したように、「倭」は、支那の冊封体制と密接不可分の屈辱的な国号だと認識されていたが故に、わざわざ国号を「日本」に改めたというのに、「倭」という漢字をわざわざ会派の名称に用いるのは、如何なものかと思う。


 6名の県議は、韓国の音楽イベントに肯定的であることからすると、親韓派、帰化人又はその子孫という可能性が無きにしも非ずだが、なんにせよ、「和」(やまと)や「大和」(やまと)という漢字を用いずに、わざわざ「倭」を用いていることからすると、日本を蔑みたいのではないかと疑われても仕方あるまい。







源法律研修所

自治体職員研修の専門機関「源法律研修所」の公式ホームページ