事務ミスの責任を負うべきなのは誰?

 下記の記事によると、滋賀県長浜市では、庁内で続発する事務ミスの対策として厳罰化を進めるらしい。

 「市はこれまで故意でない単純ミスは原則として処分の対象にしてこなかったが、続発を受け、今後は戒告以上の懲戒処分を下す場合があるとしている。」


 国家賠償法第1条第2項は、「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」と定めている。

 軽過失のときには、国又は公共団体は、加害公務員に対して求償権を有しないとされているのは、加害公務員を守るためではなく、ミスを恐れて公務遂行が萎縮しないようにするため、換言すれば、些細なミスを恐れずに積極果敢に公務を遂行してほしいという国民の期待の表れなのだ。


 損害賠償の求償権の問題と懲戒処分とは別次元の問題だから、長浜市が単純ミス(通常、軽過失だろう。)を懲戒処分の対象にすること自体は、法的に問題はなかろうが、これまでの取り扱いと異なるため、平等原則に反し裁量権の濫用(行政事件訴訟法第31条)として違法とされる可能性がある。


 公務員は、行政のプロであるが、生身の人間だ。人間誰しもミスをするものだから、人権侵害の問題を引き起こした場合を除き、単に事務ミスをしたからといって懲戒処分にするのは酷だ。

 部下がミスしないように指導監督するのが上司の務めであり、部下のミスの責任を取るのが上司である以上、単純ミスした部下の直属の上司を懲戒処分にすべきではなかろうか。

 口うるさい上司が増えそうな予感がするが。。。


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