天下泰平の江戸時代。戦さ働きで手柄を立てて出世することができなくなってしまって、ゴマすりで出世しようとする輩が出てくる始末。これを茶化す狂歌が作られた。
今でも通じるかも?
侍は 弓矢とるより 口をとり
主の御機嫌 射てぞ世に立つ
(本来は弓矢を取るのが武士だが、今は弓より「口(お世辞)」を巧みに使い、主君の機嫌を射止める者が出世する)
忠義より まづは御前の 膝をすり
武士の誉れは 袖の下かな
(忠義よりもまず御前でゴマをすること。武士の誉れも、今や「袖の下(賄賂)」次第だ)
槍よりも 長きものとは 舌なりけり
これぞ出世の 道しるべかな
(槍よりも「舌(弁舌)」のほうが出世には役立つ)
太平の 世には刀も 錆びにけり
研ぐは主君の 御機嫌ばかり
(刀は錆びるが、せっせと磨くのは主君の機嫌ばかり)
忠臣と 名乗るその身の 軽さかな
頭(こうべ)下ぐるに 骨はなきもの
(忠臣を名乗るが、実際はぺこぺこ頭を下げるばかりで骨がない)
俸禄を 思へば膝も やはらぎて
武士の気骨は どこへやら
(給料を思えば自然と腰も低くなる。武士の気骨はどこへ行ったのか)
朝な夕な すりて減りゆく わが誠
出世鏡に うつる面影
(毎日ゴマをすっているうちに、自分の誠まで減っていく。出世という鏡に映る自分の姿は、すでに本心を失っている)
武士道は いづくの道と 尋ぬれば
殿の御前の 畳のへりよ
(武士道はどこにあるのかと問えば、殿の前の畳の縁(=平伏する場所)だ)
刀より 光るは額(ぬか)の 汗ならず
すりし手のひら てらてらと
(光るのは戦いの汗ではなく、擦り続けた手のひらだ)
強き者 槍にて知らず 世の習ひ
口うまきこそ 名をばあげけれ
(槍の強さでは名は上がらず、口のうまさこそが出世の道)
一段を のぼるごとにも 腰を折り
気づけば空に 骨は残らず
(出世の階段を上るたびに腰を折って頭を下げ、最後には骨(気骨)すらなくなる)
侍の 威張る羽織も 裏を見りゃ
主にすりたる 跡ぞあはれなる
(威張って見える羽織も、裏を見れば主君にこすりつけた跡ばかり)
算盤は はじけば銭の 音がする
侍はじけば お世辞出でけり
(算盤をはじけばお金の音がするが、侍をはじけば出てくるのはお世辞ばかり)
出世した 侍見れば 町の子が
いくどすりたる 数をかぞふる
(出世した侍を見ると、町の子どもですら「何回ゴマをすったんだろう」と数える)
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