自宅で喫煙する際には、書斎ではなく、換気扇のある台所で吸わなければならない。手持ち無沙汰のため、ついテレビを付けてしまう。ずっと在宅が続いているため、テレビを付ける機会も増えてしまった。つまらないので、煙草を吸い終わったら、すぐにテレビを消すけど。
NHKも民放も、タレントMCはもちろんのこと、正社員であるアナウンサーのお辞儀が酷すぎて、テレビを付けるたびに、不愉快な思いをする。お辞儀は、相手に対して武器を隠し持っていないことを明らかにして、敵意がいないことを表すと同時に、相手に敬意や感謝を表すものだから、決して両手を組んではならないのだが、アナウンサーは、股間のところで両手を重ねたり(金隠しお辞儀)、腹のところで両手を重ねて肘を張ったり(腹痛お辞儀)して、頭を下げている。見るたびに、しつけのなっていない連中だと呆れている。
私が公務員試験の面接指導をしていたときには、武家作法に従って頭を下げながら手を腿の付け根あたりから膝の方へと腿の上を滑らせるようにするか、又はそれが慣れていなくてやりにくいのであれば、体育の授業の際の「気を付け!礼!」と同じように、中指の指先をズボンの縫い目に合わせて指を伸ばし、頭を下げるように指導していた。いずれにせよ、肩が前に出ないように胸を張って、目を伏せ、視線をお辞儀の角度に応じて前方へ落とすこと、頭だけを下げずに、腰から頭を下げること、お辞儀の動作を心持ち少しゆっくり目にするとエレガントに見えることなどを教えていた。
今だから言えるが、「こんなことは家庭のしつけの問題だろう。なんで大学生や社会人にこんなことを教えなければならないんだ!」と思っていた。講師に与えられた講義時間は限られており、一口に面接対策と言っても多岐にわたるため、できることならば、お辞儀なんかに時間を費やしたくなかったので、試しに全員にお辞儀をしてもらうようにしていた。ほとんどの受講生が正しいお辞儀ができていなかったため、結局、お辞儀の練習に時間を取られてしまうというのが実状だった。
https://ogasawararyu.wiki.fc2.com/wiki/%E3%81%8A%E8%BE%9E%E5%84%80
受講生の中に一人、腹のところで両手を重ねて肘を張ってお辞儀をする女の子がいた。武器を隠し持っているかの如き腹痛お辞儀は、我が国のマナーではないから、やめるようにと注意したところ、「先生、秘書検定ではこのお辞儀のやり方が正しいやり方だとされています。」と反論されてしまった。
文部科学省後援の秘書検定が腹痛お辞儀を正しいやり方としていること自体に驚きを禁じ得なかった。この女の子の志望先である自治体では、新採研修において、どこの馬の骨とも分からぬマナー講師と称する輩が腹痛お辞儀を教えていると聞き及んでいたので、この女の子が面接で腹痛お辞儀をしたからといってマイナス点は付かないだろうと思って、再度理由を説明して、あとは本人の意思に任せたことがある。強情を張って直さなかったが、幸にして合格採用された。
聞くところによると、もともとこの腹痛お辞儀は、韓国で始まったものだそうだ。韓国には立礼がなかったため、韓国のロッテ百貨店が日本の三越百貨店に相談したところ、三越百貨店が武家のお辞儀を教えたら、もっと高級なお辞儀を教えて欲しいと言われたので、公家が笏(しゃく)や檜扇(ひおうぎ)を持ちながら行うお辞儀を教えたそうだ。そこで、ロッテ百貨店で始まったのが腹痛お辞儀というわけだ。頭を下げた際にチマチョゴリが乱れるのを防ぐのに都合が良かったらしい。
ただし、公家が笏や檜扇を持ってお辞儀をする際には、腹痛お辞儀のように肘を張ったりしないので、誤解のないようにしていただきたい。「肘を張る」とは、「1 肘を突っ張っていかにも強そうなようすをする。威張る。」、「2 気負う。意地を張る。肩肘(かたひじ)張る。」という意味であって(『デジタル大辞泉』)、肘を張ることは、昔から我が国では無作法とされているからだ。
この腹痛お辞儀の由来の真偽は、専門家に検証していただくしかないが、少なくとも言えることは、腹痛お辞儀は、決して我が国のマナーではないということだ。
自治体関係者の中にも腹痛お辞儀がおかしいと思っておられる首長・議員・職員がおられるはずだ。なぜ直そうとなさらないのか、不思議でならない。
0コメント