11/6(金) 9:48配信の西日本新聞の記事によると、「請求理由書などによると、男性は定年退職後に区役所係長として再任用されていた昨年5月、同館を所管する市民局人権部の担当者から次期館長就任を持ちかけられ、同意。今年3月13、18日には引き継ぎや辞令交付式に関するメールを受け取ったが、同24日の内示で通知された異動先は環境局係員だった。」ということで、「副市長以上の段階で人事原案が恣意(しい)的に拒否され、差し替えられた」と主張して、福岡市人事委員会に対して処分の取り消しを求めて審査請求したそうだ。
人事異動をめぐって審査請求がなされるのは、大変珍しいケースではなかろうか。再任用職員だからこそ審査請求ができたのだろう。
同種のケースとしては、採用内定が取り消された場合がある。採用内定通知は、採用行為を行うための事実上の準備行為にすぎず、取消訴訟の対象である「処分」に当たらないので、内定を取り消されたからといって、裁判所に「内定取消をなかったことにしてくれ!」と取消訴訟を提起することはできない(最判昭57.5.27)。
採用も転任も「任用」である点で共通するから(地方公務員法第17条第1項)、この採用内定の取消のケースとパラレルに考えれば、人事異動の内示は、転任の事実上の準備行為にすぎず、行政不服申立ての対象である「処分」に当たらないので、人事異動の内示が取り消されたからといって、「人事異動の内示取消をなかったことにしてくれ!」と審査請求をすることはできないことになろう。
しかし、本件の場合は、人事異動の内示取消自体をターゲットに審査請求をしたものではなく、4月に再任用職員として環境局係員に採用されたことをターゲットに審査請求している。
任命権者は、当該地方公共団体の定年退職者等(第二十八条の二第一項の規定により退職した者若しくは前条の規定により勤務した後退職した者又は定年退職日以前に退職した者のうち勤続期間等を考慮してこれらに準ずるものとして条例で定める者をいう。以下同じ。)を、従前の勤務実績等に基づく選考により、一年を超えない範囲内で任期を定め、常時勤務を要する職に採用することができる(地方公務員法第28条の4第1項本文)とされているので、任命権者に広範な裁量権が認められており、重大な事実誤認、動機の不正、他事考慮など裁量権の濫用と認められる特段の事情がない限り、違法性が認められないとして、請求が棄却されることになると思われる。
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