欠格条項と共産党


 ある自治体職員研修の休憩時間中に、受講者から質問を受けた。


 地方公務員法第16条第4号は、「日本国憲法施行の日(昭和二十二年五月三日)以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者」に該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若くは選考を受けることができない(同条柱書)とあるが、日本共産党の党員は、この欠格条項に該当するのではないか?


 職員研修では、地方公務員法第16条第4号については、憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を負う地方公務員が、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入することは矛盾するので、欠格条項とされている旨を説明するにとどめ、具体的な説明を避けている。それ故、かかる質問がなされたのだろう。


 質問をなさった受講者に対しては、職員研修は、大学の講義とは異なり、自分の意見を発表する場ではないし、この問題は、解釈問題であると同時に政治問題でもあるので、政府見解に従って客観的な事実を述べるにとどめた。


 すなわち、「地方公務員法第16条第4号は、破壊活動防止法と表裏一体であって、『日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体』というのは、破壊活動防止法により団体の活動の制限又は解散の指定を受けた団体をいい、日本共産党は、破壊活動防止法に基づく調査対象団体ですが、破壊活動防止法により団体の活動の制限又は解散の指定を受けた団体に該当しないので、日本共産党の党員は、欠格条項に該当しません。」と回答した。


 つまり、「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体」を文理解釈すれば、破壊活動防止法に基づく調査対象団体は、これに該当するはずだが、政府は、「破壊活動防止法により団体の活動の制限又は解散の指定を受けた団体」と縮小解釈して、破壊活動防止法に基づく調査対象団体はこれに該当しないとしているわけだ。


 公安調査庁が、日本共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体だとしている理由については、下記のリンク先をご覧いただきたい。

 そして、平成28年、政府は、日本共産党が「現在においても破壊活動防止法に基づく調査対象団体である」旨の答弁書を閣議決定している。

 日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問主意書及び答弁書については、下記のリンク先をご覧いただきたい。

 令和2年11月20日、日本維新の会の鈴木宗男参院議員の質問主意書に対し、政府は、共産党について「現在においても破壊活動防止法に基づく調査対象団体だ」とする答弁書を閣議決定したそうだ。


 日本共産党の反論については、例えば、下記のリンク先をご覧ください。


 破壊活動防止法については、現在、e-Govがメンテナンス中なので、下記のリンク先をご覧いただきたい。

法律第二百四十号(昭二七・七・二一)

メインへスキップ法律第二百四十号(昭二七・七・二一)  ◎破壊活動防止法目次 第一章 総則(第一条―第四条) 第二章 破壊的団体の規制(第五条―第十条) 第三章 破壊的団体の規制の手続(第十一条―第二十六条) 第四章 調査(第二十七条―第三十四条) 第五章 雑則(第三十五条―第三十七条) 第六章 罰則(第三十八条―第四十五条) 附則   第一章 総則 (この法律の目的)第一条 この法律は、団体の活動として暴力主義的破壊活動を行つた団体に対する必要な規制措置を定めるとともに、暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定を補整し、もつて、公共の安全の確保に寄与することを目的とする。 (この法律の解釈適用)第二条 この法律は、国民の基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであつて、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあつてはならない。 (規制の基準)第三条 この法律による規制及び規制のための調査は、第一条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであつて、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあつてはならない。2 この法律による規制及び規制のための調査については、いやしくもこれを濫用し、労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあつてはならない。 (定義)第四条 この法律で「暴力主義的破壊活動」とは、左に掲げる行為をいう。 一イ 刑法(明治四十年法律第四十五号)第七十七条(内乱)、第七十八条(内乱の予備、陰謀)、第七十九条(内乱等の幇助)、第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(外患誘致及び外患援助の未遂)又は八十八条(外患誘致及び外患援助の予備、陰謀)に規定する行為をなすこと。  ロ この号イに規定する行為の教唆をなすこと。  ハ 刑法第七十七条、第八十一条又は第八十二条に規定する行為を実行させる目的をもつて、その行為のせん動をなすこと。  ニ 刑法第七十七条、第八十一条又は第八十二条に規定する行為を実行させる目的をもつて、その実行の正当性又は必要性を主張した文書又は図画を印刷し、頒布し、又は

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 こういうお話は、神経を使うので、疲れるわ〜


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