法解釈の基本は、文理解釈(文言解釈)

 条文を確認してみたところ、「土砂等の埋立て等を行おうとする者は、埋立て等区域ごとに、あらかじめ知事の許可を受けなければならないただし、次に掲げる土砂等の埋立て等については、この限りでない。」として、「国、地方公共団体その他規則で定める者が行う土砂等の埋立て等」(三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例第9条ただし書第3号)とあった。

 当該事業者は、「地方公共団体」ではない。当該事業者と伊賀市は、別法人だが、伊賀市が当該事業者に対して農地の復元工事を発注した場合には、この農地の復元工事は、伊賀市の公共工事であるから、同号にいう「地方公共団体…が行う土砂等の埋立て等」に当たると言えるが、記事を読む限りでは、伊賀市が当該事業者に発注したという事実はない。

 従って、たとえ伊賀市や県の農林事務所が工事の状況を定期的に確認している事実があったとしても、この農地の復元工事は、「地方公共団体…が行う土砂等の埋立て等」に当たらない以上、原則通り、あらかじめ知事の許可が必要ということになる(同条例第9条本文)。


 条文を国語通りに読みさえすれば、かかる結論が出てくるのであって、複雑な条文操作や目的論的解釈を必要としないのに、どうして許可不要という結論を導いてしまったのだろうか?

 

 う〜ん、条例が施行される以前から農地復元工事を行なっており、許可が必要だということになると、一旦工事をストップして許可申請してもらわなければならず、また、周辺地域の住民に許可申請の内容を周知する必要があり、許可申請の審査に時間がかかるため、当該事業者にご迷惑がかかること、誠実な事業者であることから、工事の実態に鑑み、伊賀市が自ら行う公共工事に準ずるとして、「地方公共団体」を拡大解釈して当該事業者も含まれると考えたんだろうね。たぶん。

 このように解釈して許可を不要としても、採取した土砂等の検査では、これまで基準値を超える有害物質が検出されていないので、条例の目的を損なうことがないと判断したのだろう。


 しかし、条文の構造を正しく理解すべきだった。当該条例第9条本文が原則許可制を採り、ただし書で例外的に許可を不要とする事由を列挙しているのだから、ただし書の各号列記は、限定列挙だと考えなければならない。限定列挙というのは、列挙されている事由以外には認めないという意味だ。

 このように条文の構造を理解すれば、列挙されている事由以外の例外を認める方向へ解釈してはならないということが分かったはずだ。


 無許可で埋立て工事等をすると「二年以下の懲役又は百万円以下の罰金」に処せられるが(同条例第39条第2号)、当該事業者は、きちんと県庁へ相談して、許可不要という回答に基づいて工事を行なっていたのだから、故意がないため、処罰はされないけれども、条例違反という事実が残るため、今後の入札等で不利益な取扱いを受けたりしないように配慮が必要だ。


cf.1三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例 (令和元年十二月二十三日三重県条例第二十六号)

(土砂等の埋立て等の許可)

第九条 土砂等の埋立て等を行おうとする者は、埋立て等区域ごとに、あらかじめ知事の許可を受けなければならないただし、次に掲げる土砂等の埋立て等については、この限りでない

 一 埋立て等区域の面積(一団の土地の区域内に複数の埋立て等区域があるときにあっては、これらの区域の面積を合算した面積)が三千平方メートル未満である土砂等の埋立て等

 二 土地の造成その他の事業の区域において行う土砂等の埋立て等であって当該事業の区域において採取された土砂等のみを用いて行うもの

 三 国、地方公共団体その他規則で定める者が行う土砂等の埋立て等

 四 採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)第三十三条又は砂利採取法(昭和四十三年法律第七十四号)第十六条の規定により認可を受けた者が、当該認可に基づいて採取した土砂等を販売するために一時的に当該認可に係る場所において行う土砂等の埋立て等

 五 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第八条第一項の規定による許可若しくは同法第九条第一項の規定による変更の許可に係る一般廃棄物の最終処分場において行う土砂等の埋立て等又は同法第十五条第一項の規定による許可若しくは同法第十五条の二の六第一項の規定による変更の許可に係る産業廃棄物の最終処分場において行う土砂等の埋立て等

 六 土壌汚染対策法第二十二条第一項の規定による許可又は同法第二十三条第一項の規定による変更の許可に係る汚染土壌処理施設において行う土砂等の埋立て等

 七 法令又は条例の規定による許可、認可その他の処分による土砂等の埋立て等であって規則で定めるもの

 八 非常災害のために必要な応急措置として行う土砂等の埋立て等

 九 前各号に掲げるもののほか、規則で定める土砂等の埋立て等

(罰則)

 第三十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する

 一 第八条第二項又は第三項の規定による命令に違反した者

 二 第九条、第十五条第一項又は第二十五条第一項の規定に違反して第九条の許可、第十五条第一項の変更許可、又は第二十五条第一項の承認を受けずに土砂等の埋立て等を行った者

 三 偽りその他不正の手段により、第九条の許可、第十五条第一項の変更許可又は第二十五条第一項の承認を受けた者

  四 第二十六条第一項から第四項までの規定による命令に違反した者

附 則

(施行期日)

 1 この条例は、令和二年四月一日から施行する

(経過措置)

2 この条例の施行の際現に土砂等の埋立て等を行っている者については、この条例の公布の日から起算して一年を経過する日までの間は、第九条の規定は、適用しない。その者がその期間内に同条の許可の申請をした場合において、許可又は不許可の処分があるまでの間も、同様とする。

3 この条例の施行の際現に法令又は条例の規定による許可、認可その他の処分で規則で定めるもの(以下この項において「許可等」という。)を受けている者が行う当該許可等に係る土砂等の埋立て等については、当該許可等に係る期間が満了する日までの間は、第四章の規定は、適用しない。


cf.2三重県土砂等の埋立て等の規制に関する条例施行規則 (令和二年一月三十一日三重県規則第一号)

(土砂条例第九条第三号の規則で定める者)

 第六条 土砂条例第九条第三号の規則で定める者は、次の各号に掲げる者とする

 一 土地改良区

 二 土地改良区連合

 三 土地区画整理組合

 四 市街地再開発組合

 五 日本下水道事業団

 六 土地開発公社

 七 中日本高速道路株式会社

 八 独立行政法人水資源機構

 九 前各号に掲げる者のほか、国又は地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準じるものの二分の一以上を出資している法人であって、土砂等の埋立て等について、国又は地方公共団体と同等以上に災害を防止し、及び生活環境を保全することができる者として知事が公示して定めるもの


 


 


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