子ども・子育て支援金

 忙しくてニュースのチェックを怠りがちだったのだが、政府は、「子ども・子育て支援金」の財源に充てるため、医療保険料に上乗せする形で国民に負担を課そうとしているそうだ。

 政府の試算によれば、当初は、ワンコイン500円と言っていたが、年収によっては1000円を超えるらしい。

1 医療保険制度の目的に反する

 しかし、医療保険というのは、国民が少しずつ保険料を負担し合うことによって個人にかかる医療費を軽減することを目的とする制度だから、子育て支援に充てることは、制度目的に反する。

 もしこれが前例として認められたら、今後、どんなものであっても医療保険料に上乗せする形で国民から金銭を徴収することが可能になってしまう。


2 租税法律主義の脱法行為

 のみならず、これは実質的に租税だ。租税とは、国又は地方公共団体が、その課税権に基づいて、その使用する経費に充てるために、強制的に徴収する金銭給付をいう。


 国民の私有財産権に対する侵害としての性質をもつ租税ついては、国民の代表である国会が定めた法律によってのみ課すことが許される、換言すれば、政府の判断のみによって課税することは許されないという租税法律主義が妥当する。

 憲法第84条も、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と明記している。


 形式的・名目的には租税ではなくても、例えば、手数料のように、実質的に国民に対して強制的に賦課徴収する金銭については、租税法律主義の趣旨から、国会の議決が必要だということになる。


 「子ども・子育て支援金」の財源に充てるため、医療保険料に上乗せする形で国民に負担を課すことは、形式的・名目的には医療保険料であっても、実質的には国民に対して強制的に徴収する金銭給付である以上、租税だと言える。


 医療保険料を増やすには、国民健康保険法等の法律改正が必要なので、国会の議決が必要だから、結果的には租税法律主義に反しないと政府は考えたのだろうが、医療保険料を増額すべきかではなく、正々堂々と租税として国会で議論を尽くすべきであって、医療保険料の名目で実質的に増税することは、租税法律主義の脱法行為だと言える。


3 朝三暮四

 「子ども・子育て支援金」の財源に充てるため、新税を導入すると言うと、増税反対という世論が巻き起こるから、医療保険料名目だったらよかろうというわけであって、まさに「朝三暮四」だ。


 一方で、子供をつくるかどうか、子供を産むかどうかは、個人の自己決定権に属するから、国が「産めよ殖やせよ」と言うなと主張しながら、他方で「国や自治体が子育て支援をすべきだ」、「社会全体で子供を育てることが大切だ」と社会主義的な主張をすることは、矛盾している。

 この矛盾すら理解できない大衆やマスコミは、この「朝三暮四」に気づくまいと政府は高を括っているのかも知れない。馬鹿な国会議員にこれほど馬鹿にされる国民って。。。


 「朝三暮四」については、以前述べた。

4 失策

 「子ども・子育て支援金」を給付しても、合計特殊出生率は増えない。失策ばかりの韓国が良い例だ。韓国は、2006年から2021年までの15年間だけで280兆ウォン(約31兆5千億円)もの国費を投じたが、合計特殊出生率が2004年の1.16から下がり続けて、2023年は世界最低の0.72だ。

 何が悲しくて韓国の真似をしようというのだろうか。


 我が国の女性は、心根がやさしく、頭が良い。良妻賢母が夫婦・子供のために一番良いことを知っている。夫の給与だけで余裕ある生活ができれば、しっかりと子育てをしてから、社会復帰したければ社会復帰することだろう。

 以前述べたように、累進課税・相続税・消費税を廃止し、個人・法人一律に10%の税率で課税し、美徳ある社会を目指すだけで出生率が増加する。


 女性の中には社会に出て社会との繋がりを持ちたい方もいるので、子育てを終えた女性が容易に社会復帰できる仕組みをつくるとなお良いだろう。



 

 

 

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