下記の毎日新聞の記事(有料記事なので、一部しか見られない。)によれば、「教職員による児童・生徒への暴言など不適切な言動や指導を、懲戒処分の対象として処分基準に明記していない教育委員会は、都道府県・政令市の67教委のうち17教委で、約3割に上る」そうだ。
令和4年12月、文科省は、教員向けの手引書である『生徒指導提要(改訂版)』(105頁)において、不適切指導を例示列挙している。
〔不適切な指導と考えられ得る例〕
• 大声で怒鳴る、ものを叩く
・投げる等の威圧的、感情的な言動で指導する。
• 児童生徒の言い分を聞かず、事実確認が不十分なまま思い込みで指導する。
• 組織的な対応を全く考慮せず、独断で指導する。
• 殊更に児童生徒の面前で叱責するなど、児童生徒の尊厳やプライバシーを 損なうような指導を行う。
• 児童生徒が著しく不安感や圧迫感を感じる場所で指導する。
• 他の児童生徒に連帯責任を負わせることで、本人に必要以上の負担感や罪 悪感を与える指導を行う。
• 指導後に教室に一人にする、一人で帰らせる、保護者に連絡しないなど、適 切なフォローを行わない。
都道府県・指定都市においては、すでに教職員の懲戒処分基準が定められているのだが、上記の記事にあるように、約3割の自治体が不適切指導を懲戒処分基準に盛り込んでいないわけだ。
しかし、下記のように、今年3月28日に文科省は、不適切指導についても、速やかに懲戒処分基準に定めることが望ましいと通知しているので、新年度になって慌しいとは思うけれども、速やかに懲戒処分基準を改定してほしいものだ。
全国一律の公教育において、懲戒処分基準が自治体によって区々であるというのは不合理だからだ。
『令和5年 12 月 22 日に公表した「令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査」の調 査結果等を踏まえ、公立学校教職員の人事行政を適切に行う上での留意事項について通知 します。』(5 文科初 第 2657 号 令和6年3月28日)の9頁には、次のようにある。
不適切な指導については、令和4年 12 月に改訂された「生徒指導提要」にお いて初めて盛り込まれたところであり、教員による不適切な指導等が児童生徒の不登 校や自殺のきっかけになる場合もあることから、不適切な指導等が、学校生活全体にお いて、いかなる児童生徒に対しても決して許されないことに留意すること。
また、不適切な指導等について、懲戒処分基準に規定している教育委員会もあり、未 整備の教育委員会においてはこうした規定を参考にして、速やかに懲戒処分基準に定 めることが望ましいこと。
なお、幼稚園及び特別支援学校幼稚部の幼児については、学校教育法第 11 条の懲戒 権の対象とはならないことから体罰の禁止についても明文規定はないものの、小学校 等と同様に、教員による幼児に対する体罰や暴言等の不適切な行為について、厳正な対 応が求められること。
(太字:久保)
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