平成30年6月に食品衛生法が改正されたことにより、食中毒のリスクや規格基準の有無、過去の食中毒の発生状況等を踏まえて、営業許可業種が再編され、公衆衛生に与える影響が著しい営業として、32業種が定められた。
その結果、従来、食品衛生法上、営業許可が不要であった漬物製造業についても、営業許可が必要になった。厳しい衛生管理基準を充たす施設の設置が義務付けられ、設備投資できない零細な生産者は、廃業を余儀なくされている。
2012年に北海道で集団食中毒事件を発生させた浅漬けはともかく、直売所や道の駅で販売されている手作りの漬物の多くは、乳酸発酵が進んだ酸っぱい古漬けであり、これまで保存食である古漬けで食中毒事件が発生したと聞いたことがないから、営業許可制を採るべき必要性がないのではないかと疑問に思う。
それはともかく、2024年7月7日付の大分合同新聞の「手作りの漬物販売、食品衛生法改正で許可制に 大分県では70年前から独自条例、大きな影響なし」という記事によると、「食品衛生法の改正で6月から全国の道の駅、直売所で手作りの漬物を販売するには都道府県などの営業許可が必要になった。大分県は70年前から独自に条例で許可制度を導入した経緯があり、県内の生産者や消費者に大きな影響は出ていないようだ。」
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2024/07/07/JDC2024061300445
大分県食品衛生条例及び同条例施行規則がすでに廃止され、検索してもヒットしない。
おそらく食品衛生法上の営業許可が不要であった漬物製造業についても、当該条例で営業許可制を採って、法律と同程度の衛生基準を要求していたのだろう。つまり、法律よりも規制範囲が広い横だし条例だったと考えられる。
それ故、平成30年の食品衛生法の改正により、漬物製造業について営業許可が必要になったからといって、すでに70年前から当該条例により営業許可制が採られていたので、大きな混乱が生じなかったわけだ。
漬物製造業者に無用な混乱を生じさせなかったという意味で、当該条例は先進的だったと言えよう。
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