見た、聞いた、あった?

 下記の記事によると、「斎藤知事のパワハラを「実際に見た」もしくは実際に知っている人などから「聞いた」と回答した職員が38.3%にのぼる」そうだ。

 30日に斎藤知事が証人として百条委員会に出頭するらしい。


 斎藤知事としては、カエサルにあやかって、Veni, vidi, vici.ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー「来た、見た、勝った」といきたいところだろうが、果たして結果は如何に。


 このカエサルの名言は、二つの書物に載っている。


 ユリウス・カエサルは、「ただちに三個軍団を率いてファルナケスにむかって進撃し、ゼラの町の附近で大激戦を展開した(前四七年八月二日)末、これを撃退して彼をポントスから潰走させ、その軍勢を完全に殲滅した。この戦闘の激烈さと勝利の迅速さを、ローマにいる友人の一人マティウスに手紙で知らせて「来た、見た、勝った」の三語を書き送った。」(村川堅太郎編『プルタルコス英雄伝 下』ちくま学芸文庫、242頁)。


 これに対して、スエトニウス著・国原吉之助訳『ローマ皇帝伝(上)』(岩波文庫、45頁)には、「ポントスの凱旋式には、行列の中の化粧担架にのせて三つの単語veni,vide,vici(来たり、見たり、勝ちたり)を書いた立て札を、自分の前に運ばせた。これは他の場合と違って、戦果を現わしたのではなく、迅速に戦いを終えたことを強調したものである。」とある。


 おそらくカエサルとしては、戦場に来て、敵陣の配置や地形を見て、即断即決で采配を振るったら敵が見事に術中にはまって圧勝したことが武人として誇らしかったのだろう。


 いずれにせよ、これほど簡潔で、頭文字を揃えて韻を踏んだ名言を生み出すカエサルの文才は、素晴らしい。

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