市長の辞職をめぐる法律問題

 名古屋市長の河村たかし氏が、衆議院選挙に立候補するために、市長を辞職するそうだ。

 河村氏は、主義信条がないのか、民社党→自由民主党→日本新党→新進党→自由党→無所属→民主党→無所属→減税日本→日本保守党と節操もなく政党を渡り歩き、衆議院議員を五期務め、「名古屋の人に恩返ししたい」と名古屋市長を四期務めて、また衆議院選挙に立候補するらしい。何がしたいのか、さっぱり分からんおっさんだ。


 以前このブログで触れた名古屋市教育委員会事務局職員が教員団体から金品を受け取っていた問題が解決していないのに、これを放り出すというのは、如何なものかと思う。

 結局、名古屋の有権者がそれでいいと言うのであれば、外野がとやかく言ってもどうしようもないが、下記の記事は、市長の辞職をめぐる法律問題の生きた教材になる。

cf.1 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)

第百四十条 普通地方公共団体の長の任期は、四年とする。 

② 前項の任期の起算については、公職選挙法第二百五十九条及び第二百五十九条の二の定めるところによる。

第百四十五条 普通地方公共団体の長は退職しようとするときはその退職しようとする日前、都道府県知事にあつては三十日、市町村長にあつては二十日までに当該普通地方公共団体の議会の議長に申し出なければならない。但し、議会の同意を得たときは、その期日前に退職することができる


cf.2 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)

(公務員の立候補制限) 

第八十九条 国若しくは地方公共団体の公務員又は行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)若しくは特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員若しくは職員は、在職中、公職の候補者となることができない。ただし、次の各号に掲げる公務員(行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員及び職員を含む。次条及び第百三条第三項において同じ。)は、この限りでない。

  一 内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官及び大臣補佐官 

 二 技術者、監督者及び行政事務を担当する者以外の者で、政令で指定するもの 

 三 専務として委員、顧問、参与、嘱託員その他これらに準ずる職にある者で臨時又は非常勤のものにつき、政令で指定するもの 

 四 消防団長その他の消防団員(常勤の者を除く。)及び水防団長その他の水防団員(常勤の者を除く。) 

 五 地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和二十七年法律第二百八十九号)第三条第四号に規定する職員で、政令で指定するもの 

2 衆議院議員の任期満了による総選挙又は参議院議員の通常選挙が行われる場合においては、当該衆議院議員又は参議院議員は、前項本文の規定にかかわらず、在職中その選挙における公職の候補者となることができる。地方公共団体の議会の議員又は長の任期満了による選挙が行われる場合において当該議員又は長がその選挙における公職の候補者となる場合も、また同様とする。 

3 第一項本文の規定は、同項第一号、第二号、第四号及び第五号に掲げる者並びに前項に規定する者がその職に伴い兼ねている国若しくは地方公共団体の公務員又は行政執行法人若しくは特定地方独立行政法人の役員若しくは職員たる地位に影響を及ぼすものではない。 

(立候補のための公務員の退職)

 第九十条 前条の規定により公職の候補者となることができない公務員が第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項、第八十六条の二第一項若しくは第九項、第八十六条の三第一項若しくは同条第二項において準用する第八十六条の二第九項又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定による届出により公職の候補者となつたときは当該公務員の退職に関する法令の規定にかかわらずその届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす


<追記>

 河村市長の辞職は、市議会の過半数の同意を得られず、衆院選に立候補を届け出た時点で自動失職することになったそうだ。

<追記>

 河村氏は、政治団体「日本保守党」の公認を受け、愛知1区で当選を果たした。

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