懲戒処分の公表 <追記>

 人事院が国家公務員について定めた「公務員の懲戒処分の公表指針」(平成15年11月10日総参―786)がモデルになって、自治体の多くがそれぞれ懲戒処分の公表指針を定めている。

 以前から気に入らなかったのが、「事案の概要、処分量定及び処分年月日並びに所属、役職段階等の被処分者の属性に関する情報を、個人が識別されない内容のものとすることを基本として公表するものとする」という一文だ。


 プライバシー保護に偏りすぎている。プライバシー保護を名目にして、仲間を庇っているとさえ言える。


 懲戒処分の事案の中には、犯罪や犯罪に匹敵するものが数多くある。民間人であれば、氏名が公表されるケースであっても、公務員については非公表とされるケースが少なからずある。


 公務員は全体の奉仕者であり、実質的な雇用主は国民・住民なのだから、国民・住民の信頼を裏切った被処分者の氏名を原則として公表して、不祥事を抑止するとともに、国民の知る権利に応え、民主的統制に活かせるようにすべきだ。


 この点、「青森県教育委員会は懲戒処分の公表基準を改正し、新年度から懲戒免職とした教職員の氏名と所属を原則公表する。法令や規則に違反した非違行為が多発していることを受けた抑止策や、説明責任を果たすためと改正理由を説明している。」

 懲戒免職限定だと、仲間を庇って懲戒免職を避けて懲戒停職等の軽い処分をする可能性がある。懲戒処分の軽重を問わず、原則としてすべて公表すべきだ。


<追記>

 県は異なるが、「これで懲戒免職にならないとは…」と呆れ返る事件が静岡県で発生している。

 静岡県庁が、懲戒停職処分の被処分者の氏名を公表している点は、評価すべきだ。

(1) 建造物侵入及び器物損壊      

 被処分者は、令和6年7月21日午前11時頃、浜松土木事務所内に不正に借り受けた鍵を使用して侵入し、後輩職員に嫌がらせをする目的で、当該職員が使用していたUSBメモリ等2点を廃棄した。

 被処分者は、令和6年11月11日に建造物侵入及び窃盗の疑いで逮捕され、静岡地方検察庁浜松支部に送致された。その後の捜査の結果、同月22日に建造物侵入及び器物損壊の罪名により浜松区検察庁に略式起訴され、同日、浜松簡易裁判所から罰金20万円の略式命令を受けた。   

(2) パワー・ハラスメント      

 被処分者は、令和4年8月から令和6年5月までの間、後輩職員に対して嫌がらせをする目的で、後輩職員のIDとパスワードを不正に使用し、後輩職員のメールボックス上のメールを削除したり、後輩職員がデータの保存先を誤ったように偽装した上で、嫌がらせ目的のメールを送信したり、業務に使用するデータベースの操作権限を削除する等して精神的な苦痛を与え、当該職員の勤務環境を害した。

 静岡県庁の「懲戒処分の基準」によると、プライバシー等の権利利益を侵害するおそれがある場合を除き、「懲戒免職となった場合又は刑事事件等で既に氏名等が報道機関等で公に なっている場合には、当該職員の氏名を公表する。」とされている。

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