パンダはいらない

 昭和47年(1972年)2月、米国ニクソン大統領が訪中し、米中共同宣言(上海コミュニケ)が行われ、同年9月、日中共同声明により国交が回復し、同年10月、日中友好の証しとして、上野動物園にパンダがやって来た。

 マスコミは、盛んに日中友好ムードを醸成し、空前のパンダブームが巻き起こった。

 御多分に漏れず幼き私も、カンカンとランランを一目見ようと、長蛇の列をなし、やっと目の前に来たと思ったら、パンダが顔を伏せて寝ている姿をガラス越しにちらっと見ただけだった。


 このパンダは、中国の動物だと思わされ続けているが、実は、チベットの動物だ。中国がチベットを侵略して、中国の動物だと主張しているに過ぎない。

 愛らしいパンダには、1950年の残虐の限りを尽くしたチベット侵略戦争とチベット併合、チベットの伝統文化・宗教・自然環境(チベットは鉱物資源の宝庫)の破壊と今なお続く人権弾圧の事実が隠されているのだ。

 中国は、対中感情を改善したり、国際関係を自国に有利にするため、世界的に人気があり、かつ希少性の高いパンダを相手国に贈与又は有償貸与する(現在は、ワシントン条約により譲渡が禁止され、貸与のみが認められている。)いわゆる「パンダ外交」を行なってきた。


 パンダ有償貸与契約の内容は非公開とされているが(非公開自体、住民自治・知る権利の観点から法的に問題だ。)、強(したた)かな中国のこと、契約書に明記せずとも、おそらくパンダを貸与する交換条件として、対中批判の禁止、友好都市の締結、親睦交流の促進(親中派や中国スパイの協力者の養成が目的)等を日本の自治体に求めてきたはずだ。


 パンダの有償貸与を希望する仙台市が中国とどのような交渉をしているのか等については、「詳細は答えられない」の一辺倒で、開示された文書も黒塗りであることから、中(あた)らずと雖(いえど)も遠からずだろう。

 和歌山県白浜町に有償貸与されたパンダは、期限到来を理由に返還することになったが、その背景には、親台湾派の町長が中国との友好都市の締結を拒否したことがあるようで、パンダ外交の深刻な問題が浮き彫りになった。

 パンダ自体には罪はないが、パンダを政治利用する中国の術策に住民の税金を投入するのはやめにしてはどうか。

 日本を第二のチベットにしないため、チベット侵略の真実を周知させ、対中政策を見直させることが「住民の福祉の増進」(地方自治法第1条の2第1項)に適うのではなかろうか。

「実は中国との友好都市提携を断わったばかりで……」 和歌山「パンダ4頭返還」 地元・白浜町長が語る“一斉帰国”の深層 | デイリー新潮

和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で飼育されている4頭のジャイアントパンダが6月末、一斉に中国に返還されることとなった。…

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