広域連携のモデル

 大阪府の南部にある泉州地域の自治体は、地方公共団体の相互協力が盛んだ。

 例えば、広域福祉課(泉佐野市、泉南市、阪南市、熊取町、田尻町、岬町)や広域まちづくり課(泉南市、阪南市、田尻町、岬町)という「機関等の共同設置」(地方自治法第252条の7、252条の13)を行なっている。

 これ以外にも、一部事務組合、事務委託、法定協議会も行われている。


 下記の記事によると、泉州地域の12市町が、インフラの維持管理等につき、広域連携を行うそうだ。

大阪府南部12市町/インフラ維持管理で連携/官民合同会社設立も視野 | 建設通信新聞Digital

 大阪府南部の12市町が、インフラマネジメント分野での広域連携を検討している。道路や下水道、公園の維持管理などが対象で、将来的に共同実施の主体となる官民連携会社(官民合同会社)の設立なども視野に入れている。 岸和田・泉大津・貝塚・泉佐野・和泉・高石・泉南・阪南の8市と、忠岡・熊取・田尻・岬の4町は2023年12月、国土交通省が推進する地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)のモデル地域に選定され、広域連携によるインフラマネジメントに向けた検討を本格化させた。貝塚・泉大津・泉南の3市が「幹事市」となり、検討を進めてきた。 今年3月には、先行して取り組むモデル事業の実施に向け、12市町が協定を結んだ。三井住友海上火災保険のドライブレコーダー(ドラレコ・ロードマネージャー)を用い、AI(人工知能)による画像解析で道路損傷データを取得。損傷データの分析はパシフィックコンサルタンツと大阪大学が担当し、道路の管理や修繕に役立てることを目指している。 12市町は「群マネ」のほかに総務省の「広域連携による市町村事務の共同実施モデル構築事業」でもインフラメンテナンス分野での連携を提案、今年2月に採択された。共同実施の主体となる組織体制として地方自治法上の「一部事務組合」や「広域連合」「官民合同会社」といった方式を検討している。 幹事市の一つである貝塚市の担当者によると、ドイツの「シュタットベルケ(都市公社)」や、秋田県内の公共下水管理を目的に官民が出資し23年に設立された「ONE AQITA(ワン・アキタ)」などをモデルに、「長期的に持続可能な組織体」として可能性を探る。調査業務を、パシフィックコンサルタンツに委託して進めている。委託期間は、26年3月6日まで。 インフラ分野のほか、公営住宅についても同様の調査を進める。12市町のうち貝塚・泉大津・高石・泉南の4市と田尻・岬の2町の公営住宅が対象で、広域連携により効率的に事業を実施する体制を検討する。調査業務はEY新日本有限責任監査法人が担当。委託期間は、26年2月27日まで。 「まだ検討を開始したばかりで、組織体の構築が具体的にいつ頃になるかなどは明確ではない」(貝塚市)が、実現すれば官民連携の先駆的事例となる可能性がある。

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 一部事務組合、広域連合、官民合同会社などの方式が検討されているそうだが、それぞれに一長一短がある。


 例えば、一部事務組合は、事務の重複を解消できるメリットがある反面、課税権がないため、地方交付税は構成団体に交付されるし、また、基本的に同一の事務を持ち寄っての共同処理しかできないというデメリットがある。


 どのような広域連携の方式を採用するにせよ、せめて事務の効率化を図るため、事務に関連する例規の内容を条名等の形式面も含めて統一した方がよいのではなかろうか。

 近隣自治体の例規は、原課同士の横のつながりがあるため、非常によく似ている傾向があるから、例規の統一自体は、議会の理解・協力さえ得られれば、さほど手間がかからないはずだ。


 なんにせよ、2040年問題が切実な課題になりつつある現在、広域連携よりも、泉州地域の12市町が合併によって一つの自治体になった方が意思決定がスムーズになり、効率よく事務を処理できるのだが、現時点では、地域事情や利害が複雑に絡まり、住民の理解を得られそうにない。

 しかし、様々な分野で相互協力が盛んになればなるほど、広域連携なくしてこれまで通りの行政サービスを維持できないという厳しい現実を理解する住民も増えるだろうから、将来的には市町の合併へと結びつくかもしれない。

 


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