6 四大文明は変だよ
小中学生の頃、本によって若干異なったが、「世界四大文明」、「世界四大河文明」、「四大文明」という言葉を習った。
メソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、黄河文明の4つを指す言葉だ。
しかし、これでは長江文明、メソアメリカ文明(オルメカ、テオティワカン、マヤ、アステカなど)、アンデス文明などがこぼれ落ちてしまう。
日本独自の森林の狩猟採集を中心とする縄文文明もこぼれ落ちている。
このような不合理な括(くく)り方は、学問的ではない。日本の常識は、世界の非常識だと言われるが、まさにそうで、世界では、Cradle of civilization「文明のゆりかご」という言葉で、四大文明以外の長江文明やメソアメリカ文明などを包摂している。
いつまで学校で「四大文明」という間違った歴史教育を続けるのか、呆れてものも言えない。
では、誰が「四大文明」と言い出したのか。
騎馬民族征服王朝説を唱えた考古学者の江上波夫だという説があり、初出は、昭和27年(1952年)発行の『再訂世界史』(山川出版社)らしい。
しかし、清国から日本に亡命した梁啓超が明治33年(1900年)に作った詩『二十世紀太平洋歌』に「地球上古文明祖國有四:中國、印度、埃及、小亞細亞是也」(地球上の古文明の祖国に四つあり、中国・インド・エジプト・小アジアがこれである。読み下し文:久保)とあるので、こちらが本家本元だろう。
1840年のアヘン戦争に敗れて香港を割譲した清国の末期症状を憂いて、中国の優位性を高らかに歌って自信と誇りを回復し、清国復活の志を遂げんとしたのだろう。
いずれにせよ、中国でも「四大文明」という言葉が普及しているようで、2017年、習近平国家主席は、訪中したトランプ大統領に対して「四大文明の中で中華文明だけが中断なく続いている」と述べている。
「東アジアにおいて、中華文明こそが唯一無二の文明であり、中国人のみが文明人で、それ以外は野蛮人なのだ。四大文明のうち、中華文明のみが現代まで連綿と続いているのは、中華文明が最も優れているからだ。」と言いたいのだろう。
なお、中華人民共和国は、漢民族と55の少数民族から成っており、総人口の約92%が漢民族なのだそうだ。
支那の長い歴史のほとんどを北方遊牧民族に支配されていたので、民族の交雑により、純粋な漢民族の血統は、とっくの昔に絶えていると考えるのが合理的なのに、中華思想から総人口の約92%が漢民族だと強弁しているわけだ。
習近平国家主席は、「中華民族の偉大なる復興」を唱えている。そこで、中国は、「同化政策」により、55の少数民族の言語・文化などの独自性を標準化して、「中華文明」・「中華民族=漢民族」に単一化しようとしている。
支那の歴史を正しく理解すれば、元や清のように、領土を拡大するには、異民族を尊重してその言語・宗教・文化に干渉せず、実力本位で異民族を登用し、中枢に据えることが大切なのに、習近平国家主席は、正反対のことをしているわけだ。
かつて漢民族が建国した漢や明が血筋・家柄を重視する儒教という宗教に毒されたように、中国は、中国共産党員を重視する社会主義という宗教に毒されている。
それ故、「中華民族の偉大なる復興」は、失敗するだろう。
ただ、このまま傍観していたのでは火の粉が日本に飛んでくるかもしれない。「かつて倭人は、中国に朝貢していたから、日本は中国の領土であり、日本人は中国の少数民族である」と言い出しかねないのだ。現に沖縄についてこのロジックを使い始めている。
子供達が大所高所から世界史を理解し、きちんと中国等に反論できるよう世界史の教科書を改善するのが急務と言えよう。
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