法の欠缺(けんけつ)・不備

 明日から9月だ。9月と言えば、季節感がないEarth, Wind & Fire「September」(1978年)よりも、秋に譬えて失恋を歌った竹内まりや「September」(1980年)を思い出す。

 「セプテンバー 秋に変わった 夏の日ざしが弱まるように 心に影がさした」というフレーズがあるが、明日も酷暑が続くようだ。すっかり歌詞と季節がずれてしまった。

 ところで、法の欠缺・不備に関する話題を備忘録として、載せておこう。

1 胎児

 民法の講義で、「私権の享有は、出生に始まる。」(民法第3条第1項)を習う。胎児は、「出生」によって人となり、権利能力を取得するが、胎児は、「出生」していないので、原則として権利能力がない。

 例外として、民法721条(損害賠償請求権に関する胎児の権利能力)、第886条(相続に関する胎児の権利能力)、第965条(相続人に関する規定の準用)を習う。


 また、民法の講義だけでなく、刑法の講義でも、「出生」とは何かについて習う。刑法では、一部でも露出すれば攻撃可能なので、胎児を保護するため、胎児が一部でも露出すれば、堕胎罪(刑法第202条から第216条まで)ではなく、殺人罪(刑法第199条)を適用する一部露出説が通説だが、民法では全部露出説が通説だ、ということも習う。法概念の相対性だ。


 堕胎罪は、故意犯なので、過失による交通事故によって胎児が死傷しても、堕胎罪に問われることがない。

 この場合、胎児は母体の一部として、妊婦に対する過失運転致傷として事件処理されるのだが、下記の記事によれば、果たしてこれでいいのかという疑問が呈されている。

2 土地所有権の範囲

 民法の講義で、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」(民法第207条)を習う。土地所有権は、地下水にも原則として及ぶので、井戸を掘れるわけだ。

 私が学生の頃には制定されていなかったが、おそらく今の学生は、地下水に関する例外として、大深度地下使用法(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(平成十二年法律第八十七号))や水循環基本法(平成二十六年法律第十六号)を習っているはずだ。


 そもそも外国人や外国企業が日本の土地を所有できること自体が間違っていることについては、このブログで繰り返し述べてきたところだが、下記の記事にあるように、通例地下40mまでの地下水は、土地の所有権が及ぶため、外国企業・外国人が水資源を求めて水源地の土地を購入する動きが出ている。

 イタリア、ドイツ、フランスなどでは水資源は、すべて国に帰属するとされているのに対して、日本には、このような法律がないため、各自治体が水源地の保全条例を制定しているが、最高刑が50万円以下の罰金なので、抑止力になっていない。前述した水循環基本法は、基本法にすぎず、抑止力になっていない。

ペギー葉山『学生時代』(1964年)

 ミッション系は、少女漫画みたいだ。

 私の学生時代は、いつも夜遅くまでむさ苦しい野郎どもと空き教室で法律を勉強していた。法律問題を議論していたのに、いつの間にやら天下国家を論じていた。若気の至りだ。穴があったら入りたい。ほとんどが役人になったが、定年後の人生を歩んでいる。

 今調べたら、竹内まりやは、今年で70歳だそうだ。私も歳を取るはずだ。苦笑

源法律研修所

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