2025.11.09 10:36国家による刑罰権の独占 以前、このブログで、明治6年に、「復讐ヲ嚴禁ス(明治六年二月七日太政官布告第三十七號)」という復讐禁止令が発布されたことによって、日本史上初めて国家が刑罰権を独占し、司法権を確立して近代国家になったことを述べた。
2025.11.07 11:24法の不知はこれを許さず 新規採用職員など若手職員向けの法律研修では、戒めのために、「法の不知はこれを許さず」という注意書をテキストに盛り込んでいる。 休み時間にある受講者から、なぜ「法の不知はこれを許さず」なのかと訊かれたので、ここにも書いておこう。 ローマ法の法諺(法に関する格言)に、Ignorantia legis neminem excusat.イグノーランティア・レーギス・ネーミネム・エクスクーサト、がある。 直訳すれば、「法の不知は誰も許さない」なのだが、我が国では「法の不知はこれを許さず」という訳が流布している。 「そんな法があるなんて知らなかった!」という言い訳は通用しない、という意味だ。 刑法第38条第3項本文に、「法律を知らなかったとしても、そのことによっ...
2025.10.21 21:45似て非なるもの 小中学生の頃に父の書架にあった諸子百家の本を読んで、支那(シナ。chinaの地理的呼称)の天命思想・易姓革命を知った。 ここに天命思想とは、天が徳のある者に天子たれと命じて統治させ、この者又は王位継承者が不徳者となれば、天が命令を革(あらた)め、別の有徳者に天子たれと命じて、新たな王朝を創始させるという思想をいう。天がその命を革めて別の姓の有徳者に易(か)えて治めさせるので、易姓革命という。 不徳者は、禅譲(ぜんじょう。禅も譲も「ゆずる」の意。)という方法で有徳者に天子の位を譲るか、又は、暴力によって放伐(ほうばつ。追放し討伐する意。)される。 高校の世界史や政治経済で、王権神授説が出てきた際に、「天命思想と似ているなぁ〜。洋の東西を問わず、人間とい...
2025.10.21 01:02なぜ日本で権利概念が生まれなかったのか 明治以前の日本には、権利概念が存在しなかった。なぜ日本で権利概念が生まれなかったのか。 日本の学会は、左翼に牛耳られている。進歩史観・階級闘争史観という色眼鏡でしか歴史を見ることができない左翼学者には、この謎は解けまい。 私見にすぎないが、権利概念を必要としなかったからだと考える。 すなわち、英国では、マグナ・カルタ(1215年)、清教徒革命(1640年代)、名誉革命(1688年)のように、王と国民との間に対立抗争があり、王権を制限するために、権利概念が生まれた。 これに対して、日本では、天皇と国民が血で血を洗う対立抗争をしたことが一度もなく、天皇は、時代を経るにつれて政治的実権を失い、権威のみを有するようになり、天皇の統治は、実体を伴わない象徴的な...
2025.10.19 01:03ねじれ現象 私は、学生時代から英国流の保守主義者(正確に言えば、英国流の日本型保守主義者)なのだが、元教え子とのメールのやり取りの中で、米国の保守主義と何が違うのかと訊かれた。 保守主義は、西洋思想の本流であって、英国では保守党が、米国では共和党が、それぞれ担っているのに、我が国の左翼学者によって傍流扱いされているため、英米の保守主義の違いが理解されていないことに気付かされた。 両者の違いを挙げ出したらキリがないので、権利・自由を例に簡単に英米の違いを説明した上で、英米の保守主義の違いを述べ、ついでに日本についても言及しようと思う。 英国における権利・自由は、抽象的な原理原則から導き出されたa priori rightsア・プリオリ「先天的・先験的」権利(ex....
2025.10.14 22:00時効の法理生徒 先生、こんにちは。公務員試験とは無関係の質問ですけど、よろしいでしょうか?老先生 うむ、なんじゃね?生徒 民法の授業で、「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」(民法第206条)と習ったんですけど、これって憲法第29条第1項が「財産権は、これを侵してはならない。」と保障しているからですよね? 国家が誕生する前の遙か昔において、最初の所有権って何によって保障されていたのですか?老先生 う〜ん、難しい質問じゃな〜。これから述べることは、あくまで私見にすぎず、判例・通説ではないから、決して鵜呑みにせずに、自分自身で考えて欲しいのじゃが。 有史以前の話でタイムマシンがないから、確証はないが、はっきり言え...
2025.08.30 22:55法の欠缺(けんけつ)・不備 明日から9月だ。9月と言えば、季節感がないEarth, Wind & Fire「September」(1978年)よりも、秋に譬えて失恋を歌った竹内まりや「September」(1980年)を思い出す。 「セプテンバー 秋に変わった 夏の日ざしが弱まるように 心に影がさした」というフレーズがあるが、明日も酷暑が続くようだ。すっかり歌詞と季節がずれてしまった。
2025.08.24 00:42本当は恐ろしい「法は家庭に入らず」 <追記> 愛知県豊明市が発表した、市民が余暇の時間にスマートフォンなどを使う時間を1日あたり2時間までとする条例案について、賛否両論が巻き起こっているらしい。
2025.04.04 12:55脱法行為 アメリカ合衆国憲法は、「何人も、2回を超えて大統領の職に選出されてはならない。」と定め(修正第22条第1節)、大統領を3期務めることを禁止している。 ところが、下記の記事によると、2期目を務めるトランプ大統領は、3期目も務めたいそうだ。 そこで、考え出されたのが a loophole in the constitution「憲法の抜け穴」を使う方法だ。これは、未だかつて裁判で争われたことがないものだ。 すなわち、憲法修正第22条は、大統領に2期を超えて「選出」されることを禁止しているだけで、「継承」については何も言及していない。 トランプ氏が、2028年の大統領選で別の共和党候補者(おそらく現政権のJ・D・ヴァンス副大統領)の副大統領候補になって、...
2024.12.26 07:17委任命令の形式的効力 法規命令について、以前にこのブログで触れたこと以外にも、最近の教科書には触れられていないためだろうか、盲点になっているのではないかと思われることがある。
2024.11.28 00:53条例の遡及適用の例 横須賀市情報公開条例第16条第2項の別表には、電磁的記録を「フレキシブルディスクに複写したものの交付」する場合には、「1枚につき100円に100キロバイトまでごとに200円を加えた額」を、「光ディスク(日本産業規格X0606及びX6281に適合する直径120ミリメートルの光ディスクの再生装置で再生することが可能なものに限る。)に複写したものの交付」する場合には、「1枚につき150円に100キロバイトまでごとに200円を加えた額」を公開実施手数料として徴収すると定めている。 下記の記事によると、「100キロバイトまでごとに200円」などとする規定を「1ファイルごとに210円」などに改め、9月1日にさかのぼって適用するそうだ。