下記の記事によると、「新潟県南部の豪雪地帯で35年にわたって続いた「境界線」を巡る争いが10月、最高裁で決着した。江戸時代からの資料を基に、湯沢町と十日町市が主張を展開した民事訴訟で、湯沢町に軍配が上がった」そうだ。
上記の記事には、「国土地理院によると、国内の約70地域で自治体間の境界が未確定となっている」とある。
詳しくは、国土交通省国土地理院『令和 7 年 全国都道府県市区町村別面積調 (7月1日時点)』(国土地理院技術資料 E2-No.89)に載っている。
山岳地帯や湖沼などを抱える地方都市だけかと思いきや、例えば、大阪府内にも境界未定地域があった。大阪市淀川区及び豊中市は、境界の一部が未定であって、その合計面積は、49.04 aだ。
境界未定地域では、住居表示、住民登録、固定資産税、行政サービスの対象者がはっきりしないし、都道府県をまたがって境界未定の場合には、犯罪捜査の管轄もはっきりしないなど、様々な不都合が生じる。
担当者にお訊ねしてみなければ断言できないが、おそらく関係自治体同士が話し合って、境界問題とは切り離して、実務上、どちらの自治体が担当するかを決めているのではなかろうか。
また、自治体の面積は、地方交付税の算定に考慮されるから(「基準財政需要額」の算定項目「包括算定経費」)、境界未定地域の分だけ地方交付税が減額されることになる。
自治体の境界については、「普通地方公共団体の区域は、従来の区域による」とされている(地方自治法第5条第1項)。
「市町村の境界に関し争論があるときは、都道府県知事は、関係市町村の申請に基づき、これを第二百五十一条の二の規定による調停に付することができる」とされ(同法第9条第1項)、「第二項の規定による都道府県知事の裁定に不服があるときは、関係市町村は、裁定書の交付を受けた日から三十日以内に裁判所に出訴することができる」(同法同条第8項)。
そこで、記事の湯沢町と十日町市は、35年間も裁判をしていたわけだ。
裁判の勝敗は、証拠によって決まる。証拠資料の収集に手間と時間とお金がかかるので、境界未定のまま放置している自治体が多いのだろう。
「市町村の境界が判明でない場合において、その境界に関し争論がないときは、都道府県知事は、関係市町村の意見を聴いてこれを決定することができる」とされているから(地方自治法第9条の2第1項)、この規定を活用すればよいはずなのだが、「裁判はやりたくないけど、境界は譲れない」と争論が続いているのだろう。。。
地元民の意向を無視するわけにもいかず、八方塞がりになっているのだろうなぁ〜
地方自治法が公布されて今年で78年。市町村も都道府県もお手上げ状態ならば、補完性の原理から、国が動くしかない。
特別法を制定して、境界未定地域の関係市町村に対して、期限を切って、地方自治法第9条第1項の申請をするか、又は地方自治法第9条の2の知事の決定によるかを選択的に義務付けてはどうだろうか。
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