おさらい。
地方公務員法第22条は、「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなるものとする。 この場合において、人事委員会等は、人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則。第二十二条の四第一項及び第二十二条の五第一項において同じ。)で定めるところにより、条件付採用の期間を一年を超えない範囲内で延長することができる。」と定められている。
職員採用試験で能力・適性が一応実証されているが、実際に現場で働かせてみて、さらにこれを確認することにより、地方公務員法の目的である能率的行政運営を確保しようとする趣旨だ。
条件付採用職員には、地方公務員法第27条第2項及び第28条第1項から第3項まで(身分保障を前提とした分限処分に関する規定)並びに地方公務員法第49条第1項・第2項及び行政不服審査法の規定が適用除外されている。
条件付採用職員は、試用期間中なので、正式採用された職員と同じ身分保障を与える必要がないからだ。
従って、条件付採用期間中に勤務成績が良好でなく地方公務員として不適格であると判定された場合には、条件付採用期間の満了までに免職するか、満了時に正式採用しない旨の通知をするかすれば足りることになる。
ただし、条件付採用職員の分限処分にも地方公務員法第27条第1項の公正処分の原則が適用され、その分限処分について条例で必要な事項を定めることができるとされているので(地方公務員法第29条の2第2項)、その限りにおいて身分保障がなされていると言える。
下記の記事に登場する奈良県五條市では、「五條市職員の条件付採用に関する規則」第5条第1項第2号で、「正式採用となるための能力及び成績の実証又は判定が十分でないと認められる場合 6月以内の期間」につき条件付採用期間を延長するものとする、と定められている。
上記の記事の条件付採用職員Aさんは、「仕事になかなか慣れることができず、申請書類の間違いや誤字、脱字の事務的ミスをしてしまい、それを指摘されていました。最初だから勝手がわからなかったのですが、『仕事が遅い』という烙印をおされたんです」と述べている。
この点で思い出したことがある。昔、公務員試験予備校の講師をしていたとき、受講生から「面接で、あなたは、仕事が早いが雑なタイプですか、それとも仕事が遅いが正確なタイプですか?と訊かれたら、どのように回答すべきか」と質問されたことがある。
面接の回答については、正解は一つとは限らない。このような究極の二択問題は、特にそうだ。
どちらを答えようと、面接官からのツッコミが待ち受けている。仕事に対する考え方が問われているので、結論よりも理由をしっかりと述べられるかどうかが大切だ。
そこで、あくまでも私が上司だったらと仮定した場合だがと断った上で、仕事が早いが雑な人の方を高く評価すると思うので、こちらで回答するのがベターだと思うと答えた。
というのは、仕事には締切があり、仕事には質がある。仕事が早いが雑な人の場合には、締切前にさっさと仕事を仕上げて上司である私に報告に来るから、私は、それを見て、ミスがあれば訂正させたり、違う方法が良いと修正させたりするなどの助言・指示をすることができるし、また、部下は、この助言・指示に従って訂正・修正したものに素早く仕上げ、ベストなものを締切に間に合わせることができるのに対して、仕事が遅いが正確な人の場合には、締切にはギリギリ間に合うが、もはや修正をする時間的余裕がないため、ベターなものになってしまうからだ。
仕事が遅くて不正確な人は、締切に間に合わないし、仕事の出来も悪いわけで、最悪だ。私が上司だったら、このような部下を持ちたくない。
五條市役所のAさんの件については、当事者双方の言い分が食い違っており、私には、判断しようがない。
Aさんが分限免職処分の取消訴訟を提起すれば、裁判所が判断してくれよう。
<追記>
2017年、高知県本山町でも、条件付採用職員の試用期間を延長し、その満了時に正式採用しない旨の通知を受けたケースがあった。業務日報まで載っている。
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