下記の記事によると、ペルー人女性は、2022年に「特定活動(観光)」の在留資格で来日し、「特定活動(医療目的)」に資格変更後の2023年に国民健康保険への加入を広島県福山市に申請した。
国保は、外国人も被保険者になれるが、「特定活動(医療目的)」の在留資格は対象外なのに、担当職員が誤って加入を認め、女性が自己負担すべき医療費約484万円が市から医療機関に支払われていた。市は、女性に全額返還を求める方針だそうだ。
「市保険年金課の西村智美主幹は「医療目的の在留資格を持った外国人は非常に珍しく、国保の除外要件になることを認識している職員が少なかった。課内で正しい法令の解釈を徹底したい」としている。」
女性は、昨年12月末に75歳になり、広島県後期高齢者医療広域連合でも、移行時の在留資格の確認が不十分で、女性が負担すべき約306万円を支払った。全額返還を求めるそうだ。
「今年10月、広域連合の依頼で市が広島出入国在留管理局に在留資格を照会し、ミスが判明した」そうだから、広島県後期高齢者医療広域連合の職員さんがミスに気付いたのだろう。
う〜ん、医療ツーリズムが話題になって久しい。「特定活動」医療滞在ビザとは、日本に相当期間滞在して病院または診療所に入院し疾病または傷害について医療を受ける活動及び当該入院の前後に当該疾病または傷害について継続して医療を受ける活動について与えられるビザだ。
「特定活動」とは、他の在留資格に該当しない活動を行う外国人について、入国や在留を認める場合に法務大臣が個々に活動を指定する在留資格だ。
治療を受ける人の在留資格は、「特定活動」告示第25号、付き添いの人は、「特定活動」告示第26号だ。
cf.1法務省の特定活動告示(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成二年五月二十四日法務省告示第百三十一号))
仮に、このような「特定活動」医療滞在ビザを知らなくても、国保の担当者で、加入申請の処理を担当しているならば、当然、国民健康保険法第6条第11号・国民健康保険法施行規則第1条第2号を読んでいなければならない。これらの条文を読んでいれば、「特定活動」告示第25号も第26号も、国保に加入することができないことが分かったはずだ。はっきりと明記されているのだから、「正しい法令の解釈」の問題ではない。
広島県内では「医療目的の在留資格を持った外国人は非常に珍し」いのであれば、なおさら条文を確認すべきだし、条文を読んで理解できなければ、「これって適用除外に当たるのでしょうか?」と上司に相談すべきだ。
国保は、専門性が高く、激務だと窺っている。それ故、ベテランの職員さんや上司が配置されているだろうから、決裁の段階で気付くはずなのだが、まあ、おっちょこちょいの私には、他人様のミスを責める資格がない。
ただ、条文さえ読んでいれば防げたミスであることには間違いない。
ペルー人女性に全額請求するそうだ。素直に払うかどうかは不明だが、「特定活動」医療滞在ビザ申請は、下記のいずれかで、滞在に必要な一切の費用を支弁できることを証する資料を提出しないと通らないので、偽造書類でない限り、資力はある。
(1)病院等への前払金、預託金等の支払済み証明書 適宜
(2)民間医療保険の加入証書及び約款の写し(加入している医療保険等により、治療等に要する経費を支弁することが立証されるもの) 適宜
(3)預金残高証明書 適宜
(4)スポンサーや支援団体等による支払保証書 適宜
解(げ)せないのは、この女性が「特定活動」医療滞在ビザの場合には、医療費を全額自己負担せねばならないことを承知しているはずなのに、なぜ国保の加入申請をしたのかだ。
誰かに入れ知恵された可能性がある。というのは、例えば、2022年、仙台市においても同様の事案が発生しているからだ。
以前にも述べたように、そもそも外国人の国保加入を認めること自体が愚策であって、諸外国のように、外国人には民間の保険会社と契約することを義務付けるべきだ。
(適用除外)
第六条 前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険(以下「都道府県等が行う国民健康保険」という。)の被保険者としない。
<第1号から第10号まで省略:久保>
十一 その他特別の理由がある者で厚生労働省令で定めるもの
cf.3国民健康保険法施行規則(昭和三十三年厚生省令第五十三号)
(法第六条第十一号の厚生労働省令で定める者)
第一条 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号。以下「法」という。)第六条第十一号に規定する厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 日本の国籍を有しない者であつて、住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第三十条の四十五に規定する外国人住民以外のもの(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)に定める在留資格を有する者であつて既に被保険者の資格を取得しているもの及び厚生労働大臣が別に定める者を除く。)
二 日本の国籍を有しない者であつて、入管法第七条第一項第二号の規定に基づく入管法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣が定める活動のうち、病院若しくは診療所に入院し疾病若しくは傷害について医療を受ける活動又は当該入院の前後に当該疾病若しくは傷害について継続して医療を受ける活動を行うもの及びこれらの活動を行う者の日常生活上の世話をする活動を行うもの(前号に該当する者を除く。)
三 日本の国籍を有しない者であつて、入管法第七条第一項第二号の規定に基づく入管法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣が定める活動のうち、本邦において一年を超えない期間滞在し、観光、保養その他これらに類似する活動を行うもの(十八歳以上の者に限り、第一号に該当する者を除く。)
四 日本の国籍を有しない者であり、かつ、前号に規定する者に同行する配偶者であつて、入管法第七条第一項第二号の規定に基づく入管法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣が定める活動のうち、本邦において一年を超えない期間滞在し、観光、保養その他これらに類似する活動を行うもの(第一号及び前号に該当する者を除く。)
五 その他特別の事由がある者で条例で定めるもの
cf.4出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)
(入国審査官の審査)
第七条 入国審査官は、前条第二項の申請があつたときは、当該外国人が次の各号(第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者又は第六十一条の二の十五第一項の規定により交付を受けた難民旅行証明書を所持している者については、第一号及び第四号)に掲げる上陸のための条件に適合しているかどうかを審査しなければならない。
一 その所持する旅券及び、査証を必要とする場合には、これに与えられた査証が有効であること。
二 申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく、別表第一の下欄に掲げる活動(二の表の高度専門職の項の下欄第二号に掲げる活動を除き、五の表の下欄に掲げる活動については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定める活動に限る。)又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位(永住者の項の下欄に掲げる地位を除き、定住者の項の下欄に掲げる地位については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定めるものに限る。)を有する者としての活動のいずれかに該当し、かつ、別表第一の二の表及び四の表の下欄に掲げる活動を行おうとする者については我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること(別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人については、一号特定技能外国人支援計画が第二条の五第六項及び第七項の規定に適合するものであることを含む。)。
<以下、省略:久保>
別表第一
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