通常の契約は、長が地方公共団体を代表して締結できるが(地方自治法第147 条)、その種類及び金額について政令で定める基準 に従い条例で定める一定の契約(=一定額以上の工事又は製造の請負契約)については、議会の議決が必要になる(地方自治法第96 条第 1 項第 5 号、地方自治法施行令 121 条の 2、別表 3)。
これは、既に成立している契約に対して、議会が事後的に承認を与えるという意味ではなく、長に対して新たに契約締結権限を与えるものである。条例で定める一定の契約は地方公共団体の大きな財政負担となるので、契約の基本的な事項の適否を議会にチェックさせる趣旨だ。
従って、この場合には、一般には契約の目的、契約の相手方、契約金額、契約の方法等が議案の内容になり、議案には工事請負 契約書を添付する必要は別になく(行政実例昭 25.12.28)、議会に修正権はない(行政実例昭 29.6.21)。 長は、落札者等とあらかじめ仮契約を締結した上で、議会の議決を待ち、議決後に本契約を締結することになる。
下記の記事に登場する柳泉園(りゅうせんえん)組合は、昭和35年(1960年)、東京都の清瀬市、東久留米市及び西東京市が廃棄物を共同処理するために設立した一部事務組合だ。柳泉園組合の「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」第2条により、予定価格1億5千万円以上の工事又は製造の請負契約を締結するには、議会の議決が必要だとされている。
記事には色々書かれているが(冒頭の「安倍一強体制」云々は、本件とは無関係だろう!とツッコミを入れたくなる。)、地方自治法に関連する話として興味深いのは、予定価格約150億円の焼却炉の大規模改修工事を「請負契約」ではなく、「長期包括委託契約」という形で業者に委託することによって、議会の議決を回避していた点だ。もし本来は請負契約なのに、委託契約の形式を取って、議会の議決を回避しているとしたら、脱法行為なので、許されない。
判決文を読んでいないので、事実関係や東京地裁がどのように解釈し判断しているのかが分からないが、興味深い事件なので、訴訟の行方をフォローする必要があるだろう。
cf.1地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)
第九十六条 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
一 条例を設け又は改廃すること。
二 予算を定めること。
三 決算を認定すること。
四 法律又はこれに基づく政令に規定するものを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。
五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。
六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。
七 不動産を信託すること。
八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。
九 負担付きの寄附又は贈与を受けること。
十 法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、権利を放棄すること。
十一 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること。
十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第三条第二項に規定する処分又は同条第三項に規定する裁決をいう。以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において同じ。)に係る同法第十一条第一項(同法第三十八条第一項(同法第四十三条第二項において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第百五条の二、第百九十二条及び第百九十九条の三第三項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。
十三 法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。
十四 普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の総合調整に関すること。
十五 その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)により議会の権限に属する事項
○2 前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものにあつては、国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。
cf.2柳泉園組合の「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例(昭和43年12月5日条例第7号)」
(この条例の趣旨)
第1条 議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関しては、この条例の定めるところによる。
(議会の議決に付すべき契約)
第2条 地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第96条第1項第5号の規定により議会の議決に付さなければならない契約は、予定価格1億5千万円以上の工事又は製造の請負とする。
(議会の議決に付すべき財産の取得又は処分)
第3条 法第96条第1項第8号の規定により議会の議決に付さなければならない財産の取得又は処分は、予定価格2,000万円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については、1件5,000平方メートル以上のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払いとする。
<追記>
上記記事には判決の日付が書いていなかったが、下記の記事には日付があった。しかし、残念ながら、判決を検索しても出てこなかった。
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