時季・時期、夏季・夏期

1 年次休暇の「時期」

 自治体職員研修をする際には、その自治体の例規集を見るようにしているのだが、以前から気になっている言葉がある。年次休暇の「時期」だ。

 労働基準法第39条第5項では「時季」となっているので、「時季」と入力すべきところを誤って「時期」と入力してしまったのだろうと思っていたのだが、条例Webアーカイブで検索すると、年次休暇の「時期」と表記している例規が少なからずあることから、単なる入力ミスではないのかも知れないと思い直すようになった。

 ほんの一例にすぎないが、「時期」と表記している例規を参考までに載せておく(ゴシック体:久保。以下、同じ。)。


cf.1守口市職員の勤務時間、休日及び休暇等に関する条例(平成3年2月12日条例第2号)

第6条第4項 年次休暇は、職員の請求する時期に与えるものとする。ただし、請求された時期にこれを与えることが公務の運営に支障があると認めるときは、他の時期にこれを与えることができる。


cf.2吹田市職員の勤務時間等に関する条例(昭和26年12月18日条例第169号)

第6条第4項 年次休暇は、職員の請求する時期に与える。ただし、任命権者は、請求された時期に年次休暇を与えることが公務の正常な運営を妨げる場合にあつては、他の時期にこれを与えることができる。


cf.3川崎市職員の勤務時間、休暇等に関する規則(昭和46年10月15日人委規則第12号)

第6条の2第1項 年次休暇は、職員の請求に基づき与えるものとする。ただし、任命権者は、業務に支障があると認めるときは、他の時期に与えることができる。


2 民間企業の場合は「時季」

 前述したように、民間企業の労働者に適用される労働基準法には、年次休暇の「時季」と表記されている。多くの自治体の例規も、これを見習って「時季」と表記している。


cf.4労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

第39条第5項 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。


3 国家公務員の場合は「時期」

 これに対して、国家公務員の場合には、年次休暇の「時期」と表記されている。


cf.5一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)

第17条第3項 年次休暇については、その時期につき、各省各庁の長の承認を受けなければならない。この場合において、各省各庁の長は、公務の運営に支障がある場合を除き、これを承認しなければならない。


4 「時季」と「時期」

 「時季」というのは、ことを行うのに適した季節を意味するのに対して、「時期」は、ことを行うのに適した期間を意味する。

 年次休暇の取得や変更にあたって、どの季節かよりも、いつどれぐらいの期間なのかが重要だと考えれば、「時季」よりも「時期」と表記する方が理に適っていると言える。そこで、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律と同様に、「時期」と表記する例規があるのだろう。「時季」と入力すべきところを誤って「時期」と入力してしまったとは限らないわけだ。


5 夏季と夏期

 似たような問題だが、「夏季」休暇と「夏期」休暇という表記がある。条例Webアーカイブで検索すると、「夏期」休暇と表記する例規が意外にある。

 「夏季」というのは、夏の季節という意味だ。暑い夏の季節だから休むというのであれば、「夏季」休暇と表記するのが理に適っている。「冬季」オリンピックは、寒い冬の季節だからスキーやアイススケートのような雪上や氷上のスポーツ競技会を実施するわけで、「冬季」と表記するのが理に適っているのと同じだ。

 これに対して、「夏期」というのは、夏の期間という意味だ。例えば、「夏期」講習は、暑い夏の季節だから勉強するわけではなく、夏休みの期間中に勉強するわけだから、「夏期」と表記するのが理に適っている。

 それ故、暑い夏の季節だから休むのであれば、「夏季」休暇と表記し、逆に、比較的長期間の休みがたまたま夏だというのであれば、「夏期」休暇と表記するのが理に適っていることになる。


cf.6学校教育法施行令(昭和二十八年政令第三百四十号)

(学期及び休業日)

第二十九条 公立の学校(大学を除く。以下この条において同じ。)の学期並びに夏季冬季、学年末、農繁期等における休業日又は家庭及び地域における体験的な学習活動その他の学習活動のための休業日(次項において「体験的学習活動等休業日」という。)は、市町村又は都道府県の設置する学校にあつては当該市町村又は都道府県の教育委員会が、公立大学法人の設置する学校にあつては当該公立大学法人の理事長が定める。

2 市町村又は都道府県の教育委員会は、体験的学習活動等休業日を定めるに当たつては、家庭及び地域における幼児、児童、生徒又は学生の体験的な学習活動その他の学習活動の体験的学習活動等休業日における円滑な実施及び充実を図るため、休業日の時期を適切に分散させて定めることその他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。


cf.7人事院規則一五―一四(職員の勤務時間、休日及び休暇) (平成六年人事院規則一五―一四)

第22条第1項第15号 職員が夏季における盆等の諸行事、心身の健康の維持及び増進又は家庭生活の充実のため勤務しないことが相当であると認められる場合 一の年の七月から九月までの期間内における、週休日、勤務時間法第十三条の二第一項の規定により割り振られた勤務時間の全部について超勤代休時間が指定された勤務日等、休日及び代休日を除いて原則として連続する三日の範囲内の期間


cf.8社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)

(社会教育の講座)

第四十八条 文部科学大臣は国立学校に対し、地方公共団体の長は当該地方公共団体が設置する大学若しくは幼保連携型認定こども園又は当該地方公共団体が設立する公立大学法人が設置する公立学校に対し、地方公共団体に設置されている教育委員会は当該地方公共団体が設置する大学及び幼保連携型認定こども園以外の公立学校に対し、その教育組織及び学校の施設の状況に応じ、文化講座、専門講座、夏期講座、社会学級講座等学校施設の利用による社会教育のための講座の開設を求めることができる。

2 文化講座は、成人の一般的教養に関し、専門講座は、成人の専門的学術知識に関し、夏期講座は、夏期休暇中、成人の一般的教養又は専門的学術知識に関し、それぞれ大学、高等専門学校又は高等学校において開設する。

3 社会学級講座は、成人の一般的教養に関し、小学校、中学校又は義務教育学校において開設する。

4 第一項の規定する講座を担当する講師の報酬その他必要な経費は、予算の範囲内において、国又は地方公共団体が負担する。








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