2020.02.26 05:34口頭による決裁 <追記あり>リンクが切れているので、後学のためスクショを貼らせていただく。 下記の記事によると、東京高検検事長の定年延長を妥当とする、法務省が国会へ提出した文書が、口頭による決裁を経ており、正式な決裁だとの認識を森法相が示したそうだ。口頭による決裁というのは、恥ずかしながら聞いたことがなかった。 役所は、慎重かつ明確に事務処理し、かつ、これを証拠として残すために、原則として書面主義を採っており、緊急事態の場合のみ例外的に口頭で行うと相場が決まっている。 どうせ口頭による決裁を認めているとしても、緊急事態の場合だけだろうと思って、念のために、「条例Webアーカイブ」で「口頭 決裁」というキーワード検索をした。全部をチェックするのは大変なので、大阪府内の自治体を見ただ...
2020.02.24 02:00役人学事始め 自治体の人事課は、他の役所の人事課とのつながりがあるのに、意外なことに、それぞれがどのような職員研修を行なっているのか等については、詳細をご存知ない。 そのため、人材育成に情熱を傾けておられる人事課の職員さんは、チャンスとばかりに、私のような外部講師から他の役所の動向等を訊こうとなさるし、いろいろご相談もなさる。このような熱心な職員さんを研修担当にしておられる役所は、たとえ不祥事があったとしても、土台が大変しっかりしているから、決してブレたりしない。 これに対して、土台が崩れ、澱んでいる役所の場合には、人事課の職員さんは、一見すると礼儀正しいようなのだが、慇懃無礼(いんぎんぶれい)で、事なかれ主義に陥っていて熱意が全く感じられず、当然のことながら根掘...
2020.02.15 10:00「朝三暮四」と法令の施行 中学校でも習う有名な故事成語だが、国会で「朝三暮四(ちょうさんぼし)」の意味を問われた(こんな質問をするのもどうかと思う。)鳩山由紀夫総理が自信満々に「朝令暮改(ちょうれいぼかい)」と混同する答弁を行なって失笑を買ったことがあるから、簡単におさらいしておく。 長いので、現代語訳をご覧いただきたい。ポイントは、列子(れっし。生没年不詳。古代支那の戦国時代の思想家で、老子の弟子とも言われている。)が意見を述べている下線部分だ。列子[黄帝] <原文>宋有狙公者。 愛狙、養之成群。 能解狙之意、狙亦得公之心。 損其家口、充狙之欲。 俄而匱焉。 将限其食。 恐衆狙之不馴於己也、先誑之曰、 与若芧、朝三而暮四、足乎。衆狙皆起而怒。 俄而曰、 与若芧、朝四而暮三...
2020.02.13 14:08アメリカ人が作った翻訳語「権利」 自治体職員研修では、時間の関係上、端折って説明しているが、実は、英語rightを「権利」と翻訳したのはアメリカ人なのだ。 このアメリカ人の名前は、William Alexander Parsons Martinウィリアム・アレクサンダー・パーソンズ・マーティン(1827〜1916。漢語名は丁韙良。支那には仮名文字がないため、欧米人名を漢字で表記する。)という。プロテスタント長老派の宣教師として、清国で布教活動等をしていた。 「権利」という漢語自体は、古くから支那(chinaシナ。中国の地理的呼称。)で用いられている。例えば、『荀子』勧学篇第一には、「是故權利不能傾也」(是の故に權利も傾くること能わず。権力でも利益でも心は動かされないというような意味だ...
2020.02.09 01:20遣唐使考 <追記> 明治民法の起草者である穂積陳重(ほづみ のぶしげ)先生、梅謙次郎(うめ けんじろう)先生及び富井政章(とみい まさあき)先生は、「明治民法三博士」と呼ばれている。このうち、穂積先生は、私費留学生としてイギリスとドイツへ、梅先生は、国費留学生としてフランスへ留学されている。 ところが、富井先生は、私費留学生と言えば聞こえが良いが、司法省の法律学校(現在の東京大学法学部)の入試に落ちて、あてもないのに片道の旅費だけを持ってフランスへ渡り、スッテンテンになって途方に暮れていたところ、ギーメという親切な御仁に助けられて、住み込みで働きながら苦学した。大学の授業料を払うお金がないため、リヨン大学へ忍び込んで机の下に隠れて聴講していたところ、ある日発見され、事情...
2020.02.05 11:50原則と例外〜稀代の策士 藤原不比等小伝〜 実務上、例外を押さえなければ、正しい法令執行ができないのだが、自治体職員研修で初心者を対象とする場合には、細かな例外については触れずに、原則を押さえるように講義をしつつ、重大な例外については、「法律の世界で原則と言えば、必ず例外があります。例外のない原則はありません。」という風に注意喚起してから、説明するようにしている。 変な話だが、法令上は例外とされていることが、実務上原則的に運用されていることも多い。 例えば、弊ブログ「例規から見える大阪人気質?〜国民健康保険〜」で述べたように、国民健康保険法上は、保険料方式を原則としており、保険税方式は例外として位置付けられているにも拘らず、保険税方式の方が自治体にとって有利であるために、保険税方式を採っている...