2021.10.25 01:46後出しじゃんけん条例 「後出しじゃんけん」とは、「じゃんけんで相手の手を見てから自分の手を出すこと。後出しはじゃんけんにおける主な反則行為。転じて、相手の出方を把握してそれに対応するアンフェアなやり方。」をいう( 『実用日本語表現辞典』)。 法律の世界にも、後出しじゃんけんに相当する原則がある。事後法の禁止だ。事後法の禁止とは、新たに制定された法律(事後法)は、その制定以前にさかのぼって適用してはならないという原則をいう。法律不遡及(ふそきゅう)の原則ともいう。 例えば、手数料 を値上げするため手数料条例を改正し、これを過去に遡(さかのぼ)って適用すると、過去の手数料について差額分を追加徴収 する必要が生じて住民の信頼を裏切ることになるように、法的...
2021.10.20 12:45下命 「御下命を拝する」、「御下命あり次第手配致し候」というように、「下命(かめい)」は、本来、「① 命令をくだすこと。いいつけ。 」、「 ② 命令の尊敬語。おおせつけ。「御」をつけて用いることが多い。」を意味する(『精選版 日本国語大辞典』小学館)。 上位者から下位者に命令する場合には、「上意書(じょういがき)」・「下文(くだしぶみ)」・「下知状(げじじょう。後世では、げちじょうという。)」などと呼ばれる書状を用いる。これらの書き始めは、「下」や「下す」といった言葉で始める。 例えば、時代劇の『忠臣蔵』で浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が切腹を命じられる場面で、幕府の役人と浅野内匠頭は、同じ大名なので、対等に話しているが、いざ切腹を命じる際には、役人が「...
2021.10.16 07:15特権1 人権体系の背後にあるもの 「特権」と聞くと、不平等だ!、アンフェアだ!という感情が先行しがちかもしれない。 しかし、光あるところ影あり。表があれば、裏がある。おそらく誰も指摘していないだろうが、実は、人権体系の山の背後に隠れて、広大な特権の海が存在しているのだ。 憲法の教科書は、人権体系を詳述しているけれども、特権体系をも明らかにして、初めて我が国の権利のあり方の全容が明らかになるはずなのだが、個々の特権について言及されることはあっても、残念ながら、特権に共通した法理があるのか、あるとすればどのような内容なのかなど、特権全般について体系的な研究が行われていないように思われるのだ(勉強不足で、私が知らないだけかも知れないが。)。 このブログでこれを明...
2021.10.13 15:00自由意志の背景 以前、「意志」と「意思」の異同について述べた際に省略したのだが、西洋では自由意志が認められるかどうかを巡って激しい論争が繰り広げられている。その詳細については、数多の書籍が売られているので、そちらへ譲るが、今日は、議論の背景にあるキリスト教の世界観について述べようと思う。 なお、参考文献は、多岐にわたるので、省略する。また、聖書の章句も、文章が長くなるので、一々引用しない。 とても大切なことだが、語弊のある表現や雑な説明であることは百も承知しているけれども、正確さよりも分かり易さを優先させているためであって、決してキリスト教徒の信仰を貶したり、妨げたりすることを意図しているわけではないので、失礼の段は、何卒(なにとぞ)、ご容赦願いたい。
2021.10.07 13:05軽犯罪法や迷惑防止条例のルーツ 長生きすると、想像もつかないことに出くわすものだ。下記の記事によると、男が自分の胸を揉んで女性に見せつけた疑いで逮捕されたらしい。一瞬、意味が理解できず、頭の中が「???」になった。 テレビ局の記事は、直ぐに削除される傾向にあるので、スクショを貼らせていただく。問題があれば、直ちに削除する。
2021.10.05 15:00国会の議決によらずに成立した「法律」 「法律」とは、何か。 憲法の教科書や法律用語辞典では、通常、次のような定義づけが行われている。 すなわち、「一般に、広く国民の権利・義務にかかわる法規範を指す場合があり、これを実質的意味の法律という。これに対して、国会の議決によって成立する成文法を指す場合があり、これを形式的意味の法律という。」(野中・中村・高橋・高見著『憲法Ⅱ』(有斐閣)336頁。ゴシック体:久保)。 これは、憲法学を学んだ者にとって、伊呂波の伊(いろはのい)であって、「何をいまさら」と云われそうだ。 もちろん、日本国憲法の解釈として、この定義が間違いだというわけではない。 しかし、「国会の議決によらずに成立し、日本国憲法上効力を有する「法律」がある」と言ったら、どうだろうか。 「...
2021.10.03 23:20「善意」と「悪意」1 日常用語と法律用語の乖離(かいり)? 民法を学び始めて戸惑った言葉の一つが「善意」・「悪意」だ。私だけでなく、世間の人も戸惑うようで、国立国語研究所は、次のように述べている(下線:久保)。 「一般的な意味での「善意」は「よい心,親切な心」という意味ですが,法律用語の「善意」は「ある事実を知らないこと」という全く異なる意味になります。「善意」の対義語である「悪意」も同様です。一般的な意味の「悪意」は「悪い心,人に害を加えようとする気持ち」ですが,法律用語では「ある事実を知っていること」という意味になります。このように同じ語であるのに,日常的に使われる時の意味と法律用語で使われる時の意味が異なるものがあるのです。」 「現在使われている法律用語の基盤は...
2021.10.01 01:46責を負う <追記あり> ここ数年、ドラマやアニメで変な読み方のセリフを聞くようになった。通常、シリアスな場面なのだが、登場人物が「セキを負う」と言うと、いっぺんに興醒めしてしまって、「せめを負う」だろ!と内心ツッコミを入れて、視聴をやめてしまう。 ずっと嘆かわしいと思いつつも、なぜ「セキを負う」と言うのだろうかと疑問に思っていたのだが、たまたま常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)を見ていたら、俳優・声優などの収録スタッフが悪いのではなく、台本を書いた脚本家と国語審議会が悪いのだということに気がついた。 ご存知のように、「責」という漢字の音読みは、シャク(呉音)、サク(漢音)、サイ(漢音)、セキ(慣用音)だ。 訓読みは、「せ」める、「せめ」だ。 それ故、例えば、改正前の民法...