フェイク動画かも知れないが、ひろゆき(西村博之)氏が上皇陛下や天皇陛下などの皇族は日本人ではない旨を述べていることがネットで話題になっていた。
こいつの言ってる事は置いといて、上皇陛下や天皇陛下に向かって「あいつ」呼ばわりは聞き捨てならんな
— 坂上 田村麻呂 (@sakanoue078) May 1, 2024
こいつにこそ追討の院宣出すべし pic.twitter.com/Fd7TrfX7Ht
今、自治体職員研修のテキスト原稿の作成に忙殺されているので、反論は、落ち着いてからにする。
昔から「己を以って人を量る」(およそ人は、自分を標準として他人の心を推し量るものだ。)というけれども、それにしても己の無知・誤解による罵詈雑言の数々には怒りを禁じ得ない。
<追記>
上記動画がフェイクではない場合には、動画再生回数を増やすためのいわゆる「釣り」なのかもしれないし、又は得意げに嬉々として述べている様子に鑑みると、財をなしても知性・品性に劣り、トラブルばかり起こして誰からも尊敬されないが故に、国内外から尊敬を集める天皇陛下が妬ましく、天皇陛下を愚弄することで己の優位を錯覚し無上の喜びを感じているのかも知れない。
動機がなんであれ、ひろゆき氏の発言は、ネット上大きな話題になり、その主張を信じる愚か者が出てくる可能性があるので、反論しておく。
1 天皇陛下は、世界で最も由緒正しい
言うまでもないが、我が国は、神武天皇の即位から数えて2684年の歴史がある。仮に初代神武天皇から第25代武烈天皇までの実在性を否定する歴史学(国際コミュンテルンの32年テーゼにより「天皇制」を打倒せよと命じられているから。)に従って古墳時代に建国されたとしても、1400年以上の歴史があることから、世界最長の国であるとともに、世界最長の王室(第2位は、デンマーク)でもある。
つまり、天皇陛下をはじめとする皇族は、世界で最も由緒正しい血統だということだ。これほど身元がはっきりした人は、世界広しと雖も、他にはいない。
天皇陛下ほど血筋がはっきりした日本人はいないのに、ひろゆき氏が主張するように、天皇陛下が日本人ではないとしたら、一体誰が日本人だというのだろうか。
2 天皇陛下は、君主であり元首である
ひろゆき氏は、天皇陛下が日本人ではない根拠として、天皇陛下がパスポートを持っていないことを挙げている。
しかし、国際法上(国際法のほとんどは慣習法である。)、君主国の元首が海外渡航する際に旅券(パスポート)の所持・携行は不要とされている。
天皇が君主・元首であることを否定する憲法学者が多い(国際コミュンテルンの32年テーゼにより「天皇制」を打倒せよと命じられているから。)。
しかし、憲法学者がなんと言おうと、国際法上、天皇は、日本国という君主国家の元首である。「日本の常識は、世界の非常識」なのだ。
例えば、来日する外国の大使・公使の信任状の宛先は、天皇であり、天皇が受理するのが慣例となっている。
旅券についても、国際法上、天皇陛下は、君主国家の元首として処遇され、天皇及び皇后の旅券の所持・携行は不要とされている。
旅券は、日本国政府が外国政府に対して、その所持人が日本国民であることを証明し、併せてその人が支障なく安全に旅行できるよう必要な保護と扶助を要請する公文書だ。世界で最も由緒正しい天皇陛下が日本国民であることを証明する必要性がそもそもないのだ。
天皇は、パスポートを持っていないから、日本人ではないというひろゆき氏の主張は、無知蒙昧による誤りということになる。
ちなみに、天皇皇后両陛下以外の皇族には、我々一般国民の「一般旅券」ではなく、外交官と同様の「外交旅券」が外国ご訪問ごとに発給されている。
3 天皇陛下は、日本国民である
ひろゆき氏は、天皇陛下に国籍がないことを理由に、日本人ではないと主張している。国籍とは、人が特定の国の構成員であるための資格をいう。
大日本帝国憲法には、「国民」の記載はなく、「臣民」の記載があった。ここにいう「臣民」は、国家の構成員たる日本国民から天皇及び皇族を除いた者を意味する。
大日本帝国憲法第18条は、「日本臣民タル要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル」と定め、これを受けて制定された旧国籍法は、「日本臣民タル要件」すなわち臣籍を定めたものであって、国籍を定めたものではなかった。
これに対して、日本国憲法第10条は、天皇及び皇族並びに臣民を区別することなく、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定している。「日本国民たる要件」にいう「日本国民」とは、国家の構成員たる日本国民を意味し、これには、天皇及び皇族が当然含まれることになる。
そして、日本国憲法第10条を受けて制定された国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)第2条第1号は、子が「出生の時に父又は母が日本国民であるとき」には、日本国民とすると定めているから、天皇及び皇族も、国籍法上の日本国民ということになる。
ひろゆき氏は、天皇及び皇族が日本国籍を持っていないことを理由に、日本人ではないと主張しているが、無知蒙昧に基づく誤りということになる。
なお、愚かな憲法学者たちは、国民主権を基本原理とする日本国憲法が大日本帝国憲法第73条の改正手続で成立したことを理論的矛盾だとして、これを矛盾なく如何に説明すべきかと議論している。
暴力革命(プロレタリア革命)によって「天皇制」を打倒したかったが、それが現実には叶わず、東京裁判で昭和天皇を戦犯として絞首刑にできなかったと悔しがる憲法学者は、ありもしない天皇主権を想定して、ポツダム宣言の受諾により天皇主権から国民主権に変わったとする八月革命説を唱えて、溜飲を下げている。
しかし、大日本帝国憲法には、英国と同様に、「主権」の観念がないため、大日本帝国憲法が天皇主権だったというのは、明らかに間違っている。この点については、以前、このブログで簡単に触れた。
日本国憲法第1条に「主権の存する日本国民の総意に基く」とあるように、天皇及び皇族を含めた国家の構成員たる「日本国民」の総意によって日本国憲法が制定された以上、天皇が大日本帝国憲法第73条の改正規定に基づいて、国民主権を基本原理とする日本国憲法を裁可し公布したことは、なんら矛盾するものではないことになる(私見)。
4 天皇陛下には戸籍がないが、これに代わる皇統譜の登録がある
皇室典範(昭和二十二年法律第三号)第26条は、「天皇及び皇族の身分に関する事項は、これを皇統譜に登録する。」と定めている。皇統譜については、皇統譜令(昭和二十二年政令第一号)に定めがある。
このように天皇及び皇族の身分に関する事項は、皇統譜に登録されるため、一般国民の身分事項を登録する制度である戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の適用はない。 したがって、天皇及び皇族は、戸籍を持たない。戸籍とは、一般の日本国民についての身分関係を登録・公証するものをいう。
5 天皇陛下には住民票がない
ひろゆき氏は、天皇陛下には住民票がないから、日本人ではないと主張している。
しかし、住民票とは、居住関係を公証するものをいう。つまり、区市町村に住んでいるということを公証するものにすぎないのであって、住民票があるから日本国民であるということにはならないし、逆に、住民票がないから日本国民ではないということにはならない。
住民基本台帳法の改正により、平成24年(2012年)7月9日以降は、外国人住民にも日本人と同様に、住民票が作成されるようになったから、なおさらだ(戸籍は、外国人には作成されない。)。
確かに、天皇及び皇族には住民票がないが、これは居住関係を公証する必要がないからにすぎない。
例えば、皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れ、皇籍を離脱した旨が皇統譜に記載され、新たに戸籍が作成されることになる。一般国民として生活する上で必要になるから、戸籍謄本、住民票、マイナンバーカード等も作成されることになる。
6 天皇陛下には苗字がない
ひろゆき氏は、天皇陛下に苗字がないから、日本人ではないと主張している。
確かに、天皇及び皇族には苗字がない(ここではひろゆき氏に合わせて「苗字」と表記している。)。
しかし、天皇は、万世一系であり、世界で唯一無二の存在だから、苗字を名乗って他人と区別をする必要がないし、また、古代における天皇は、姓を授ける側であって、 授けられる側ではないし、さらに、以前、このブログで述べたように、各家の苗字が異なっても、全ての家を包み込み、みんなの宗家であることを表すために、皇室には苗字がないのだ。
苗字は、他人と区別するために一般国民が名乗る名称にすぎない。何処の馬の骨とも分からぬひろゆき氏には、苗字が必要だが、世界で最も由緒正しい天皇及び皇族には苗字がそもそも不要なのだ。身の程をわきまえて物申すがよい。
ちなみに、英国王室にも苗字に相当するファミリーネームがないが、ひろゆき氏の論法でいくと、馬鹿げたことに、チャールズ国王はイギリス人ではないことになる。
なお、姓氏については、以前述べた。
7 天皇陛下にも法律が適用される
ひろゆき氏は、天皇陛下は日本の法律に縛られないから、日本人ではないと主張している。
しかし、例えば、天皇陛下には皇室典範(昭和二十二年法律第三号)という法律が適用されるので、この一事をもってひろゆき氏の主張が大間違いであることは明らかだ。
蛇足だが、皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)で非課税とされているもの以外については、天皇及び皇族にも所得税法や相続税法が適用され、所得税や相続税を支払わなければならない。
例えば、昭和天皇の遺産総額約20億円(内廷費の余剰を貯めた金融資産約18億円と美術品約7千万円)を香淳皇后陛下と天皇陛下(現在の上皇陛下)が2人で相続され、天皇陛下は、相続税額4億2,800万円の相続税を納税されている。
なお、御料車のシートベルトについては、以前述べた。
8 天皇の敬称は、陛下である
日本国憲法第1条は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と定めている。
天皇に対しては、かかる地位にふさわしく敬意を表す必要がある。。
そこで、皇室典範第23条第1項は、「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后の敬称は、陛下とする。」と定め、同条第2項は、「前項の皇族以外の皇族の敬称は、殿下とする。」と定めている。
また、天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成二十九年法律第六十三号)第3条第2項は、「上皇の敬称は、陛下とする。」と定めている。
貴人を敬うことは、古今東西すべての国・民族において人の倫だとされている。昭和22年(1947年)に、刑法第二編第一章「皇室に対する罪」が削除されたため、天皇及び皇族に対する不敬は、名誉毀損罪(刑法第230条)及び侮辱罪(刑法第231条)を除き、法的に罪を問うことができないが、道義的責任を問うことは可能である。
cf.削除された刑法第二編第一章
第一章 皇室ニ對スル罪
第七十三條 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ對シ危害󠄂ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者󠄁ハ死𠛬ニ處ス
第七十四條 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ對シ不敬ノ行爲アリタル者󠄁ハ三月󠄁以上五年以下ノ懲󠄁役ニ處ス 神󠄀宮又ハ皇陵ニ對シ不敬ノ行爲アリタル者󠄁亦同シ
第七十五條 皇族ニ對シ危害󠄂ヲ加ヘタル者󠄁ハ死𠛬ニ處シ危害󠄂ヲ加ヘントシタル者󠄁ハ無期󠄁懲󠄁役ニ處ス
第七十六條 皇族ニ對シ不敬ノ行爲アリタル者󠄁ハ二月󠄁以上四年以下ノ懲󠄁役ニ處ス
ひろゆき氏は、天皇陛下や上皇陛下を呼び捨てにするだけでなく、口汚く「あいつら」呼ばわりして、愚にもつかない理由を挙げて「日本人ではない」と愚弄している。
これは、天皇陛下や上皇陛下への侮辱だけにとどまらず、「主権の存する日本国民の総意」を侮辱するものでもある。
日本国憲法第22条第2項は、国籍離脱の自由を保障している。刀の錆にするに値しないひろゆき氏にはぜひ国籍を離脱してほしいものだ。
0コメント