埋葬又は埋蔵にあらざれば墓地にあらず

 墓地、埋葬等に関する法律(以下、「墓埋法」という。)第2条には、次のように定められている。


cf.墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)

第二条 この法律で「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。 

2 この法律で「火葬」とは、死体を葬るために、これを焼くことをいう。 

3 この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。 

4 この法律で「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。 

5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう。 

6 この法律で「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。 

7 この法律で「火葬場」とは、火葬を行うために、火葬場として都道府県知事の許可をうけた施設をいう。


 一目瞭然だが、「埋蔵」及び「収蔵」については、定義規定が置かれていない。


 手元に墓埋法の専門書がないので、断言はできないが、国語通りに解釈すると、つぎのようになろう。


 まず、「埋葬」は、墓埋法第2条第1項に明記されているように、死体を土中に葬ること(埋めること)であって、土葬のことだ。「墳墓」と呼ばれる施設(同法同条第4項)の「土中」に葬らなければならない。

 次に、火葬した死体の遺骨(焼骨)を「墳墓」と呼ばれる施設(同法同条第4項)に納めること(埋めること)を「埋蔵」というと解される。

 さらに、火葬した死体の遺骨(焼骨)を「納骨堂」と呼ばれる施設(同法同条第6項)に納めることを「収蔵」というと解される。


 つまり、「埋葬」と「埋蔵」は、いずれも「墳墓」に納められる(埋められる)点で共通するが、「埋葬」は、死体をそのまま土中に埋めるのに対して、「埋蔵」は、火葬した死体の遺骨(焼骨)を埋める点で異なることになる。


 「埋蔵」と「収蔵」は、いずれも火葬した死体の遺骨(焼骨)が客体である点で共通するが、「埋蔵」は、「墳墓」に納めるのに対して、「収蔵」は、「納骨堂」に納める点で異なることになる。


 そうだとすると、火葬した死体の遺骨(焼骨)を埋めずに、これを砕いて粉状にして撒くいわゆる「散骨」は、「埋葬」にも「埋蔵」にも当たらないので、散骨場は「墓地」に当たらない以上、散骨場を設置するにあたって、「墓地」として都道府県知事の許可は不要ということになる


 それ故、下記の記事に登場する自然宗佛國寺・黙雷住職の

「(墓地としての認識は)ないです。墓地埋葬法には、ひっかからない。申請は必要ないと三重県に言われた」 

住職は、三重県の担当者(当時)から「遺骨が地表にみえている状態は"埋葬"ではなく、法律が禁止していない"散骨"にあたり、私有地に散骨をしているという解釈をすれば、墓地として許可申請の必要がない」と言われた

という主張には説得力がある。


 確かに、自己所有地に散骨することは墓埋法で規制されていない以上、自由であるから、節度ある散骨が認められて然るべきであるが、他方で、写真を見る限り、焼骨を砕いて粉状にしておらず、付近住民が嫌がるのもごもっともだ。仮にこの散骨の場所が水源地であったり水源地に近い場合には、なおさら嫌悪感が増すことだろう。


 穏便に話し合えば済む問題だと思わなくもないが、三重県大台町(おおだいちょう)としては、両者の意見・利害を調整するため、散骨を規制する条例を制定するのも一つの手だろう。

 散骨を規制する条例は、全国に11本制定されているので、これを参考に地元にマッチした条例案を作成するのが望ましい。

 両者を交渉のテーブルにつかせなければ話にならないので、参考までに埼玉県本庄市の条例のリンクを貼っておく。

 

ex.本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例(平成22年3月31日 条例第1号)

本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例

○本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例平成22年3月31日条例第1号(目的)第1条 この条例は、散骨場の設置及び管理等が、市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から適正に行われるための措置を講じることにより、市民の生活環境の保全に資することを目的とする。(定義)第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。(1) 散骨場 墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第2条第2項に規定する火葬により生じた骨の粉末(その形状が顆粒状のもの及び遺灰を含む。)を地表等へ散布を行うための施設をいう。(2) 近隣住民 散骨場の敷地の境界から300メートル以内の区域に居住する者及び当該区域に土地又は建築物を所有する者をいう。(設置者の責務)第3条 散骨場を設置する者は、当該散骨場の設置又は管理に際しては、周辺の生活環境に及ぼす影響に十分配慮するとともに、良好な近隣関係を損なわないよう努めなければならない。(設置等の許可)第4条 散骨場を設置しようとする者は、あらかじめ市長の許可を受けなければならない。設置の許可を受けた散骨場について、第9条第1項第3号から第5号までに掲げる事項を変更し、又は廃止しようとする者も、同様とする。(事前協議)第5条 前条の許可(廃止の許可を除く。)を申請しようとする者(以下「申請予定者」という。)は、第9条第1項の規定による申請書の提出前に、規則で定めるところにより、協議書を提出し、散骨場の設置又は変更に係る計画(以下「設置等計画」という。)について市長と協議しなければならない。2 市長は、前項の規定による協議があったときは、申請予定者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。(標識の設置)第6条 申請予定者は、散骨場の設置等計画の周知を図るため、規則で定めるところにより、当該計画に係る土地の見やすい場所に標識を設置しなければならない。2 申請予定者は、前項の規定により標識を設置したときは、速やかに、その旨を市長に届け出なければならない。(説明会の開催)第7条 申請予定者は、規則で定めるところにより、近隣住民に対し、散骨場の設置等計画についての説明会を開催しなければならない。2 申請予定者は、前項の規定による説明会を開催したときは、規則で定めるところにより、速やかに、その内容

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