下記の記事にある元最高裁判事で現在弁護士をしている千葉勝美氏の憲法解釈は、解釈改憲だ。
同性愛を禁止し、弾圧してきた西洋とは異なり、我が国では、同性愛は、表立って推奨されることがなかったけれども、昔から大目に見られてきた。
同性愛がタブー視されるようになったのは、大正15年(1915年)、同性愛は治療可能な精神疾患であるとする羽太鋭治・澤田順次郎共著『變態性慾論』(春陽堂)が嚆矢(こうし)とされている。国会図書館デジタルコレクションにこの本が収蔵されていないので、未読であるが、真面目な医学書であることは、著者のその他の本を見れば分かる。
なお、下記のサイトによると、「1952年にアメリカ精神医学会が発行した「精神障害の分類と診断の手引」(DSM)(第1版)において、同性愛は精神障害とみなされ、社会病質人格障害の章で「性的逸脱」とされました。その後、旧東ドイツの医師ダーナーが、「母親が妊娠中にストレスを受けて男児に男性ホルモンが十分に分泌されないと、男児は男性としての脳が未発達のまま生まれ、男性同性愛者となる」という説を発表し、同性愛が病気であるというイメージが強まりました。
しかし、その後、運動の進展や医師の理解が深まるにつれて、1974年に発行されたDSMの第3版以降においては、同性愛は精神疾患として治療する必要はないという方針に転換しました。1993年には世界保健機関(WHO)が国際疾病分類(ICD)(第10版)で、同性愛を治療の対象からはずしました。」とある。
さて、前掲『變態性慾論』以降、昭和21年(1946年)に公布された日本国憲法が起草された当時、少なくとも我が国の医師の間では同性愛が病気であると考えられていたのは、間違いなかろう。
それ故、千葉氏の「憲法制定当時、同性愛は治療が必要な病気で、性の秩序を乱すものとみなされていました。憲法の草案に関わった人たちの頭の中には結婚といえば異性婚しかなく、同性婚を認める、認めないという議論もありませんでした」という発言(下線:久保)は、その通りだと思う。
ところが、千葉氏は、その舌の根も乾かないうちに、「同性愛者が念頭にないから両性という言葉を使っただけで、この条文に同性婚を排除するという意図や文言はありません。つまり憲法24条は性別については何も言っていないのです」と発言(下線:久保)をしている。
しかし、「憲法制定当時、同性愛は治療が必要な病気で、性の秩序を乱すものとみなされてい」たからこそ、同性婚を認める、認めないという議論をするまでもなく、同性婚を排除するために、憲法第24条は、「両性」という言葉を使っているのだと考えるのが論理的だろう。
したがって、「『両性』という言葉を『当事者』に置き換えて捉え」、「『夫婦』という言葉も、…『双方』と言い換え」ることは、憲法第24条の趣旨に反し、文言の枠を超えるものとして許されないことになる。
このように千葉氏の論理は、矛盾しており、支離滅裂であって、千葉氏の論拠は、破綻(はたん)している。これは、憲法解釈ではなく、見紛(みまが)うことなき解釈改憲だ。
左翼の連中は、憲法第9条が自衛戦争を放棄していないという解釈を解釈改憲だと難癖を付けるのだが、自分の政治的主張に都合がよい場合には、このように平気で解釈改憲を行う。
ダブルスタンダードは、左翼の常套手段だから、今更驚きはしないが、最高裁調査官を務め、エリート司法官僚として最高裁判事にまで登り詰めた千葉氏が、憲法の文言を明らかに無視して、このような解釈改憲をしたことには驚きを禁じ得ない。裁判所の赤色汚染の深刻さを物語るエピソードの一つと言えよう。
千葉氏だけではない。例えば、司法試験・司法修習を経ずに裁判官に任官し、最高裁調査官等を経て学者(行政法)に転身し、最高裁判事になった園部逸夫氏も、例えば『皇室法概論』(第一法規出版)において、新聞『赤旗』かと見紛うばかりのトンデモ解釈改憲を展開しており、裁判所の赤色汚染の根は深い。
ところで、民法では、近親婚が禁止されている。すなわち、「直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない」(民法第734条第1項本文)。
つまり、親子、祖父と孫娘、祖母と孫息子、兄弟姉妹、おじ(伯父・叔父)と姪、おば(伯母・叔母)と甥は、婚姻できない。
近親婚は、常染色体性劣性遺伝病の罹患者頻度が非近親婚(他人婚)に比べて上昇するからだ。
要するに、血が濃い者同士の間に生まれた子供は、深刻な遺伝病を患う可能性が極めて高いので、近親婚を禁止しているわけだ。
そもそも子供が生まれない同性婚の場合には、近親婚を禁止すべき理由がないから、同性婚が認められた暁(あかつき)には、父と息子、母と娘、祖父と孫息子、祖母と孫娘、兄と弟、姉と妹、おじ(伯父・叔父)と甥、おば(伯母・叔母)と姪は、婚姻できることになる。
同性婚には様々な問題があるが、この一点だけを採り上げただけでも、同性婚を認めることが、婚姻制度だけでなく、家族制度、ひいては道徳そのものを破壊することにつながることを容易に理解できよう。
これこそがまさにマルクス主義者の真の狙いなのだ。
「同性愛」は、現在病気ではないとされており、自由にしたらよいが、「同性婚」は、あまりにも弊害が多いから、絶対に認めてはならないのだ。
マスコミは、日本人の無知とお人よしにつけ込み、同情心に訴えて同性婚を容認する世論形成をしつつ、千葉氏のような解釈改憲を喧伝するのだが、夢夢騙されてはならない。
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