日本弱体化工作か?

 地方公務員法研修で講義をしている際に、いつも不愉快に思うことがある。


 地方公務員法第57条に「単純な労務に雇用される者」とあり、教科書の類では「単純労務職員」と表記されている。

 その範囲については、すでに廃止されている「単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員の範囲を定める政令(昭和二十六年二月十五日政令第二十五号)」が参考になる。

 知識・経験・技能を要する労務なのに、「単純な労務」と決め付けている点に、立法者の選民思想が読み取れて、不愉快になるのだ。失礼だろ!

 多くの自治体は、例規等に「単純労務職員」と表記をしているが、自治体の中にも、おそらく私と同様の問題意識から、「技能職員」と表記するところが少なからずある。


 同様のことは、他にもある。3年前、「就活の教科書」を運営するSynergy Career(大阪市)が「【底辺職とは?】底辺の仕事ランキング一覧」をサイトに掲載し、物議を醸したことがある。


 フジテレビのニュース番組がこのサイトを取り上げて、「底辺職」とされた職業の人に「どう思うか?」とインタビューをしていたが、このようなインタビューをすることやこれを放送することが失礼だと思わないほど、フジテレビも、選民思想に毒されているようだ。

 「底辺職」とされた職業に従事する人たちが、やりがい・生きがい・誇りを持ってきちんと働いているからこそ、日本は、安心安全で快適な生活を営むことができ、世界から羨望の眼差しを受けているのだ。良識ある日本人は、感謝しているのに、「底辺職」呼ばわりするとは何事か!恥を知れ!


 このような選民思想が社会に広がり、「底辺職」に外国人が就くと、欧米のように、二度と国民が「底辺職」に就かなくなり、差別が固定化し、日本社会は弱体化する。

 ネットでも「底辺」と呼んで蔑む書き込みをよく見かけるが、ひょっとしたら日本社会の強みを破壊しようとする工作活動ではないかと思わなくもない。



源法律研修所

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