給食で残った食材を使ってまかない料理を作って教職員に提供したとして、京都市教育委員会は、市立小学校の60代女性と50代女性の給食調理員2人を減給(平均賃金の半日分)の懲戒処分にした。
個人店であれば、夜遅くまで残業をしている教職員のために夜食を提供した美談になっただろう。
しかし、給食費が私費であろうが公費であろうが、京都市立小学校の給食の食材は、京都市という他人の所有物だから、これを勝手に使って料理を作ることは、その食材の占有が給食調理員にあるかどうかによって、業務上横領罪(刑法第253条)又は窃盗罪(刑法第235条)に当たる。
京都市教育委員会職員の 懲戒処分に関する指針では、「公金又は公物を横領し,窃取し又は詐取した職員は,免職とする。」とされている。
また、給食の食材は、消耗品であって、「物品」に当たる。「物品に関する事務に従事する職員は、その取扱いに係る物品(政令で定める物品を除く。)を普通地方公共団体から譲り受けることができない。」とされている(地方自治法第239条第2項)。
地方公務員には法令遵守義務が課されているので(地方公務員法第32条)、物品を勝手に譲り受けることは、法令遵守義務違反として違法となり、懲戒処分(地方公務員法第29条)の対象になる。
京都市教育委員会職員の 懲戒処分に関する指針では、「無断流用等,自己が保管する公金又は公物の不適正な処理をした職員は,停職, 減給又は戒告とする。」とされている。
おそらく京都市教育委員会は、公物の不適正な処理に当たるとして、給食調理員に対して減給懲戒処分を下したのだろう。
さらに、記事によると「給食で残った食材は適切に管理・廃棄する必要があり、衛生管理上、給食室内に私的な食材を持ち込むことは禁止されている。」とある。おそらく訓令・通達・要綱などの行政規則で定められていると思われる。
行政規則は、上司の職務命令の性格を持っている。地方公務員には上司の職務命令に従う義務が課されているので(地方公務員法第32条)、給食調理員は、これに違反したとして、懲戒処分の対象になる。
このように思いつくまま書いてみたけど、そもそも給食の食材は、使い切るのが原則であって、余らないように発注すべきだ。
食品ロスを生じさせるから、「もったいない」という気持ちから不適正な処理に走らせるわけで、発注担当者(管理栄養士?)の責任も問われるべきだ。
この京都市のケースは、食材が余ったケースだが、2019年の堺市のケースは、給食の食べ残しのケースだ。参考までに記事のリンクを貼っておく。
cf.1刑法(明治四十年法律第四十五号)
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(業務上横領)
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
cf.2地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)
(物品)
第二百三十九条 この法律において「物品」とは、普通地方公共団体の所有に属する動産で次の各号に掲げるもの以外のもの及び普通地方公共団体が使用のために保管する動産(政令で定める動産を除く。)をいう。
一 現金(現金に代えて納付される証券を含む。)
二 公有財産に属するもの
三 基金に属するもの
2 物品に関する事務に従事する職員は、その取扱いに係る物品(政令で定める物品を除く。)を普通地方公共団体から譲り受けることができない。
3 前項の規定に違反する行為は、これを無効とする。
4 前二項に定めるもののほか、物品の管理及び処分に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
5 普通地方公共団体の所有に属しない動産で普通地方公共団体が保管するもの(使用のために保管するものを除く。)のうち政令で定めるもの(以下「占有動産」という。)の管理に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
cf.3地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)
(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)
第三十二条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
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