2005年の開業当初から都市計画法に違反することを把握していたのだから、直ちに除却命令を出すべきだった。最初の判断を誤ったが故に、20年間も違法状態を黙認せざるを得なくなったのだ。
「都市計画法に抵触する恐れを把握しながら、事後的に動物取扱業者の届け出を受理した経緯について、市側は「すでに動物が飼育・展示され、動物保護の観点から必要な措置だった」と説明する」のだが、動物の保護を考慮に入れて除却命令をしないことは、他事考慮(裁量権を行使する際に、考慮すべき事項を考慮せず、又は考慮すべきでない事項を考慮すること)であって、裁量権の逸脱濫用(行政事件訴訟法第30条)として違法だ。動物の保護については、別途引き取り手を探せばよいのだ。
最高裁も、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに代替措置について検討することもなく、体育科目を不認定として担当教員らの評価を受けて、原級留置処分をし、さらに、不認定の主たる理由及び全体成績について勘案することなく、2年続けて原級留置となったため進級等規程及び退学内規に従って学則にいう「学力劣等で成業の見込みがないと認められる者」に当たるとしてなされた退学処分は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるをえない、と判示している(エホバの証人剣道拒否事件・最判平8.3.8)。
除却命令をせずに、わざわざご親切に届出するように行政指導した上で、動物取扱業者の届け出を受理したことは、結果的に、悪徳業者にお墨付きを与えるようなものであって、本末転倒だ。悪徳業者になめられて当然だ。
なお、登録の更新、宿泊施設などの営業を認めた理由については「都市計画法とは別の法令に基づく分野で、当該の法令違反がない限りは登録更新や許可申請を拒めなかった」と述べているのは、その通りだ。前述したように、他事考慮は、裁量権の逸脱濫用となり得るからだ。
このように他事考慮が裁量権の逸脱濫用として違法になることを承知しながら、あえて動物の保護という他事考慮をして、除却命令をしなかったのは、違法であり、悪質だ。
すなわち、「除却その他違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができる」(都市計画法第81条第1項柱書)とあるため、文字通りに解すれば、その権限を行使するかどうかは、行政庁の裁量に委ねられているから、行政庁がその権限を行使しないからといって直ちに違法になるわけではない。
しかし、その権限が付与された趣旨・目的に照らし、権限の不行使が著しく不合理と認められる場合には、権限の不行使自体は裁量権の範囲内であるが、裁量権を認めた法の趣旨・目的に反するので、裁量権の濫用として違法になるというのが判例である(裁量権の消極的濫用論を採った京都誠和住建事件判決、最判平元・11・24)。
つまり、他事考慮して除却命令をしないことは、除却命令の権限を付与した都市計画法の趣旨・目的に照らして、著しく不合理と認められるので、裁量権の濫用として違法なのだ。
記事を読む限り、札幌市自らが違法行為を行っていることについて、自覚がなく、まったく反省の色が見えない。
0コメント