インテルならば知っていたが

 下記の記事を読むまで、「インセル」(Involuntary celibateインボランタリー・セリベイト「不本意の禁欲主義者」。「非自発的禁欲主義者」と訳した方がベターか。)なんて、聞いたことがなかった。はっきり言って、気持ち悪い。女に振られたぐらいで、「いつまでもメソメソするな!シャッキっとしろ!まっすぐ生きろ!」とウーマンリブ全盛期に少年時代を過ごした不細工なジジイは思う。

 我が国には、「インセル」に相当する言葉がないが、強いて言えば、日本のネットスラング「陰キャ」(「陰気なキャラクター」)や「引きこもり」だろうか。


 西洋は、伝統的にマッチョ社会だから、マッチョな男性がモテる。映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のような、アメリカの高校を舞台とした映画やドラマでは、jockジョック(「体育会系」に類似する概念)と呼ばれるアメフト・バスケ・野球の選手が脚光を浴び、スクール・カーストの上位に位置しているのに対して、ガリ勉、オタク(漫画・アニメだけでなく、文学や音楽・美術も含む。)、チビ、デブ等は、nerdナード(「文化系」に類似する概念)と呼ばれ、いじめやからかいの対象で、最下層のカーストに位置付けられているのが定番だ。不良は、スクール・カーストの外に置かれている。

 

 映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』の主人公マーティーは、過去を改変することによって、いじめっ子のビフを使用人にした(になっていた、と言うべきか。)が、タイム・トラベルは、あり得ない。

 ボディービルダーのような、ウェイトトレーニングとプロテインで作り上げた筋肉は、見た目は立派で、瞬間的に凄い力を発揮するが、持続性・柔軟性・俊敏性に欠け、脂肪を極限まで絞っているので、打撃に弱く、実戦では役に立たない。武術の稽古で鍛え上げた筋肉とは全く異なる。

 「健全な精神は、健全な肉体に宿る」じゃないが、「インセル」は、武術を習えば、いじめっ子に仕返しをするまでもなく、体格が劣っていても勝てるという自信がついて、前向きに生きられるだろうにと思う。


 これに対して、「色男、金と力はなかりけり」と言われるように、従来、日本では、マッチョな男性は、女性に怖がれる傾向にあり、どちらかと言えば、若い頃の木村拓哉に代表される中性的な優男(やさおとこ)が好まれてきたように思う。母性愛がくすぐられるからだろうか。

 今の男性アイドルグループも、K-popならぬゲイ・ポップと揶揄(やゆ)されるように、軽佻浮薄さが増し、化粧をして気持ち悪いとはいえ、基本的には同様の傾向が続いている。


 ところが、最近は、フェミニズムによって「男らしさ」・「女らしさ」が否定され続けている反動からだろうか、マッチョな男性が女性に好まれる傾向が生まれているように思われる。見た目重視のルッキズム「外見至上主義」が、この傾向に拍車をかけているようだ。

 とはいえ、西洋におけるゴリラのような筋骨隆々としたマッチョではなく、細マッチョが好まれているようだが。


 西洋は、伝統的に男尊女卑のマッチョ社会だからこそ、フェミニズムが声高に叫ばれるのだが、このような社会的背景を異にする我が国でフェミニズムが主流になれば、「男らしさ」が乏しい女々しい男が多くなるため、マッチョな男性が持て囃(はや)され、「インセル」が社会問題化するのも時間の問題ということになろう。



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