「実効支配」と「実効的支配」

 下記の記事によると、「自民党の有村治子元女性活躍担当相は15日の参院外交防衛員会で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を巡る岩屋毅外相の用語の使い方に苦言を呈した。尖閣について領有権の問題は存在しないというのが政府の一貫した立場だ。一方、岩屋氏は領有権が確立していない状態を指すことが多い「実効支配」を用いており、有村氏は「主権がどちらにあるか根幹を揺るがす言葉だ」と強く自戒を求めた。」

 「15日の同委では、外務省担当者が尖閣について「政府として法的な意味で領有権が確立している地域を意味する言葉として『有効に支配している』という表現を使っている」と指摘した。 有村氏も「実効支配」の用語について「必ずしも関係当事国の中で領有権が確立していない、あるいは係争中で、武力などで事実上占拠している状態をいうことが多い」と解説した。」

 「これに対して岩屋氏も「尖閣諸島を巡って解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」と強調した上で「以後よく気を付けたい」と語った」そうだ(太字・下線:久保)。

 有村議員が岩屋外務大臣から一本取ったかたちだ。

 有村議員によると、

 「実効支配」=必ずしも関係当事国の中で領有権が確立していない、あるいは係争中で、武力などで事実上占拠している状態

 「有効に支配している」=法的な意味で領有権が確立している地域

ということになる。


 ところが、内閣官房のHPに載っている国際法が専門の愛知大学名誉教授三好正弘氏によると、メディアが安易に使い始めた「実効支配」(法や正義を無視してでも力を行使してある領土を占有し支配する事実上の状態又はそれを狙う行為)は、国際法の観点から正しくない表現なのだそうだ。


 国際法上の「実効的支配(effective control)」とは、正当な実効的支配を意味する。

 

 なんら正当性のない韓国の竹島に対する行為や中国の尖閣諸島周辺海域に対する行為については、「事実上の支配を狙う行為」と呼ぶべきだ、と主張している。


 なぜならば、「領土に対する主権・領有権の取得及びその維持ないし保有において国際法上最も重視されるのがその行為の客観的「実効性」であり、それが正当性を有るときに領有が本物になるのである。したがって、世上に出回っている「実効支配」という表現は、「事実上の支配を狙う行為」を表すものでしかない」からだ。

 三好氏の「実効的支配」は、外務省担当者のいう「有効に支配している」に相当するものだと考えられる。


 外交問題について、不適切な言葉を使うと、誤ったメッセージを相手国に与えてしまうので、閣僚は、国際法を踏まえた慎重な言葉遣いをしてほしいし、メディアも安易な言葉遣いをしないように心がけて欲しいものだ。

 まあ、メディアは、意図的に「実効支配」という紛らわしい言葉を用いて、韓国や中国の支配を国際法上正当化したいのだろうが。




 

 


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