都道府県も道州も不要?

 2月13日、衆議院予算委員会で、村上誠一郎総務相は、「県庁は不要」「道州制も不要」と発言した。

 村上総務相は、その真意について、インタビューで答えている。

 村上総務相の問題意識は、国を憂うる多くの人々に共有されているが、総務省の「持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会」に諮問している段階だから、村上総務相の具体案が見えてこないため、なんともコメントしようがない。


 私なりに想像力を逞しくするならば、村上総務相は、県庁も道州制も不要だと述べている以上、国と市の二元制を考えているのではあるまいか。


 すなわち、少子高齢化、人口減少、東京一極集中、財源不足、人員不足、インフラの老朽化等により、これまで通りの行政サービスを市町村が提供できなくなることは、多くの識者が指摘している通りだ。行政サービスの量も質も低下せざるを得ないのだ。


 我々日本人は、「一億総中流」と呼ばれて久しく、すでにその幻想は崩壊しているだが、そのことに気付かない、又は気付いていても認めたくない多くの国民は、いまだに横並び意識が強いため、全国で一律の行政サービスを受けられなくなれば、不平等だ、差別だと不満を抱くだろう。平等主義に毒された我々日本人は、自治体ごとの行政サービスの極端な差に耐えられないからだ。


 平等を求める国民世論に逆らうことができない国としては、全国一律の行政サービスを提供すべく、国が直営で地方行政を担わざるを得なくなる。


 この点、「たとえば都道府県というものを廃して道州制を置くことも、私は憲法違反ではないと思います。その道州制を地方公共団体でなくすることも、また憲法違反ではな必ずしもない。・・・たとえば都道府県が現在持っておる自治的な機能を全部市町村に移して、しかも地方公共団体を一段階にして、そして、たとえば都道府県を単純な行政区画にするということは、必ずしも憲法の地方自治の本旨にもとるものではない」というのが政府見解だ(第40回国会 衆議院予算委員会(昭和37年2月28日)林(修)政府委員(法制局長官)政府答弁)。

 つまり、この政府見解に従う限り、都道府県を廃止して、国と市町村の二段階制にすることは、憲法違反ではないということになる。


 そこで、都道府県を廃止して国の単なる行政区画とした上で、住民に最も身近な市町村は、その実働部隊として再編成されることになる。村上総務相は、全国の市町村を30万〜40万の人口で市に再編(町村を合併により市にするわけだ。)するという。都道府県職員は、市職員として採用されることになる。

 平成11年の地方自治法改正前のように、市は、一部の自治事務を除き、国の下級行政機関として機関委任事務を担うことになるわけだ。


 私の独断と偏見で村上総務相の考えを妄想してみたが、この妄想は、平成11年の地方分権改革を真正面から否定し、中央集権化を図ることを意味する。

 当然、地方分権推進派の地方公共団体・学者・マスコミ等の猛反発が予想される。


 しかし、以前このブログで述べたように(どこに書いたかは忘れた。苦笑)、少子化は、程度の差こそあれ先進国に共通した課題であり、先進国では中央集権化がトレンドだ。地方分権を推進している先進国は、我が国だけだ。

 惜しむらくは、経済が右肩上がりだった高度経済成長期に地方分権を推進すれば、各自治体が国から移譲された権限を活用し、創意工夫して地方色豊かな地方行政が花開いた可能性はあるが、平成の御代では遅すぎた。


 村上氏は、衆議院予算委員会で総務大臣として発言している以上、総務省の官僚たちの大方の考えを代弁している可能性があり、今後の動きに注目すべきだろう。

 




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