犬の散歩禁止条例?

 下記の記事のタイトル「公園で犬の散歩禁止?鎌倉市が条例見直し検討示唆 全国でも例のないルール」を見て、一瞬「鎌倉市は、公園内での犬の散歩禁止条例を制定しているのか?」と思ったが、そうではなかった。

 記事にもあるように、都市公園法第18条の委任を受けた鎌倉市都市公園条例第3条第10号の「都市公園の管理に支障がある行為をすること」に犬の散歩が該当すると解釈運用しているにすぎなかった。


 鎌倉市の説明によると、「街区公園は、お子さんや高齢者のご利用が多く、犬が苦手で、恐怖心をお持ちの方々に対して、 十分な離隔距離を確保することができず、安全性を担保することが困難であるため、街区公園内へ犬を連れて来られる行為は、鎌倉市都市公園条例第3条第10号の「都市公園の管理に支障が ある行為をすること」に該当」するとのことだ。


 また、地方自治法第244条第2項は、「普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」と定め、同条項第3項は、「普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。」と定めている。


 前述したように、犬の散歩が鎌倉市都市公園条例第3条第10号の「都市公園の管理に支障がある行為をすること」に該当する以上、地方自治法第244条第2項の「正当な理由」があることになるし、またこれは合理的理由による区別として地方自治法第244条第3項に違反するものではないということになる。


 ところで、上記の記事のタイトルには「全国でも例のないルール」とあるが、本当だろうか。


 明文の規定で公園内で犬の散歩をすることを禁止している条例を調べてみたら、あった!


 長野市都市公園条例第5条第8号本文で、原則として「動物を引き連れること。」が禁止されている。

 鎌倉市のように解釈運用で犬の散歩を禁止するよりも、長野市のように明文の規定でこれを禁止する方が予測可能性が担保され、人権保障の観点から望ましい。


 犬を飼っている住民の利益と犬嫌いや小さな子供のいる住民の利益とのバランスをとって、長野市都市公園条例第5条第8号ただし書イのように、広い公園でリードを付けた飼い犬については、公園内での散歩を認める明文の規定を置いた方がよいのではなかろうか。鎌倉市も、同じ解釈運用をしているが例規に明文の規定がないからだ。

 鎌倉市もルールの見直しを検討するそうだから、長野市都市公園条例第5条第8号を参考にしてほしい。


cf.1都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)

(条例又は政令で規定する事項) 

第十八条 この法律及びこの法律に基づく命令で定めるもののほか、都市公園の設置及び管理に関し必要な事項は、条例(国の設置に係る都市公園にあつては、政令)で定める


cf.2鎌倉市都市公園条例 (昭和41年10月20日条例第25号)

(行為の禁止) 

第3条 都市公園においては、次の各号に掲げる行為をしてはならない。ただし、法第5条第1項、法第6条第1項若しくは第3項又は次条第1項若しくは第3項の規定に基づく許可に係るものについては、この限りでない。

  (1) 施設を損傷し、又は汚損すること。

  (2) 竹木を伐採し、若しくは植物を採取し、又はこれらを傷つけること。

  (3) 土地の形質を変更すること。

  (4) 魚鳥等を捕獲し、又は殺傷すること。

  (5) はり紙若しくは立札をし、又は広告を表示すること。

  (6) 立入禁止区域に立ち入ること。

  (7) キャンプを行うこと。

  (8) 指定された場所以外の場所へ車両を乗り入れ、又はとめおくこと。

  (9) 都市公園をその用途以外に使用すること。

  (10) 前各号のほか、都市公園の管理に支障がある行為をすること


cf.3地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)

(公の施設) 

第二百四十四条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。 

2 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り住民が公の施設を利用することを拒んではならない。 

3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない


cf.4長野市都市公園条例 (昭和41年10月16日長野市条例第90号)

(行為の禁止) 

第5条 都市公園においては、次の各号に掲げる行為をしてはならない。ただし、法第5条第1項、法第6条第1項若しくは第3項又は第3条第1項若しくは第3項の許可に係るものについては、この限りでない。

 (1) 都市公園を損傷し、又は汚損すること。

 (2) 竹木を伐採し、又は植物を採取すること。

 (3) 土地の形質を変更すること。

 (4) 鳥獣類を捕獲し、又は殺傷すること。

 (5) はり紙、はり札その他の広告物を表示し、又は掲出すること(指定された場所に市長の承諾を受けて表示し、又は掲出する場合を除く。)。

 (6) 立入禁止区域に立入ること。

 (7) 指定された場所以外の場所へ車馬を乗り入れ、又はとめておくこと。

 (8) 動物を引き連れることただし、次に掲げる場合を除く。 

  ア 盲導犬、聴導犬その他これらに類するものをその目的のために使用するとき。 

  イ 規則で定める都市公園の市長が告示する区域において飼犬を引き綱等を付けて散歩させるとき。

  ウ ドッグラン施設(柵等で隔離された区域の中で飼主の管理の下において飼犬を運動させるための施設として市長が告示する施設をいう。)内において飼犬を運動させるとき。

 (9) 他人の迷惑となるような物品を携帯して入園すること。

 (10) 都市公園をその用途以外に使用すること。

 (11) その他管理上支障があると認められる行為

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