これって人権侵害なんだけど


 この投稿主によると、京都市は、報道しない、個人情報の漏洩に当たらないとの立場だったが、一転して、事件を公表し謝罪した。

 預金口座を差し押さえると、引き出しできないわけで、これを誤ると、財産権という人権の侵害に当たるという認識が担当者になかったのかも知れない。


 同姓同名で誕生日も同じ別人に誤って差押をする事件は、これまでにもたびたび起きている。

 今回の事件の原因について、京都市は、「預金差押えの際に滞納者の情報と金融機関に照会した口座情報の照合及び確認が不十分であったものです」と説明している。

 同姓同名で誕生日も同じであっても、住所が異なるので、住所の確認をし、住所が異なる場合には、その住所の市町村に問い合わせるなどの調査を行うよう再発防止を徹底してほしいものだ。


 滞納者が利用している金融機関を把握するのは、手間と時間がかかる。

 通常、納付折衝の際に滞納者本人から聞き出したり、確定申告書を閲覧して還付金の振込先口座を確認したり、滞納者の勤務先に照会して給与の振込先口座を把握したり、滞納者が不動産を所有している場合には、不動産登記簿を確認して融資を受けている金融機関を把握したり、滞納者が賃貸住宅に住んでいる場合には、大家に照会して家賃の引落口座を把握したり、電気やガスなどの会社に照会して公共料金の引落口座を把握したり、生命保険会社や通信会社に照会して保険料や通信料金の引落口座を把握したり、滞納者が自動車を所有している場合には、ローン会社に照会してローンの引落口座を把握したり、滞納者に子供がいる場合には、学校に照会して学費の支払いに利用している金融機関を把握したり、児童手当の支給先口座を把握したりする。

 他にも、素人の私が思い付かない行政のプロならではのノウハウがあるはずだ。


 こうして苦労の末、滞納者が利用している金融機関を把握したら、その金融機関に対して、国税徴収法第141条に基づいて、財産調査を行う。

 ところが、金融機関によっては、照会専用の集中センターで一括回答しているところもあるが、金融機関によって対応はまちまちであるし、照会先によって回答の仕方や回答までの時間もまちまちだそうだ。


 そして、口座残高に一喜一憂するのを我慢して、入出金明細を細かくチェックして差押可能かどうか、定期的な入金などの日付等を確認しなければならない。

 その上で、差押可能な一定の残高があれば、速やかに差押を実施する。残高がない場合でも、定期的に入金されている実態があれば、次の入金見込み時期に合わせて差押を実施する。

 

 大雑把ではあるが、このように一口に差押といっても、本当に手間と時間がかかる。しかも、滞納者は、たくさんいるので、担当者の負担は、非常に重い。

 あってはならないことではあるけれども、住所確認を怠って、同姓同名で誕生日も同じの別人に誤って差押をしてしまうことを、おっちょこちょいの私は、責められない。人間誰しもミスをするものだからだ。

 ただし、ミスが発覚した後の対応は、誠実に行なってほしいものだ。








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