私が今住んでいる所には、昔、2軒の本屋さんが駅前にあったが、今はもうない。街の小さな本屋さんへ行くためには、1駅分ぐらい歩かねばならない。本好きには、住みにくい時代になってしまった。
さて、下記の記事によると、2016年、青森県八戸市は、離島以外で全国初の直営書店を開業した。「借りて読むこと」と「買って読むこと」は、経験が違うので、図書館ではなく、書店なのだという。
毎年、約50件の視察が来るが、追随した自治体は、福井県敦賀市だけだという。
民業を圧迫せぬように、①コミック、雑誌、ベストセラーなどの売れ筋を置かず、②本の注文も受け付けず、市内の民間書店で注文してもらうようにしているそうだ。
そのため、赤字経営だ。すなわち、「24年度の書籍売り上げは約1350万円、センター運営費を使途に指定した「ふるさと納税」は、2157人から約2300万円だった。これに対し支出は約1億700万円で、一般財源から約6500万円を持ち出した。」
この八戸市直営の本屋さんは、株式会社なのかと思いきや、そうではなかった。八戸ブックセンター条例(平成28年6月21日 条例第32号)には、明記されているわけではないが、地方自治法上の公の施設(地方自治法第244条)という建て付けだ。
地方公共団体は、「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」(地方自治法第2条第14項)。
赤字を垂れ流している公の施設だからといって、必ずしも費用対効果が低いとは言い切れない。文化政策・施策の効果は、数字で見える化することが困難だからだ。
例えば、人文社会科学の本は、街の小さな本屋さんには置いておらず、実際に手に取って選択するためには、大都市の大型書店へ行かねばならず、そのための手間と時間を省くことができるだけでも、本好きには大変ありがたい。本好きが増えれば、街の小さな本屋さんも廃業しなくて済む。
「八戸ブックセンター基本計画書」には、「市民のみなさんに様々な本に親しんで いただき、市民の豊かな想像力や思考力を育み、本のある暮らしが当たり前となる、文化 の薫り高いまちを目指すとともに、当施設を中心市街地に開設することにより、来街者の 増加、回遊性の向上を図り、中心市街地の活性化にもつなげることを目的として開設が計 画されました」とある。
市長の選挙公約なので、赤字だからといって簡単にやめるわけにもいかないという事情もあろう。
なんにせよ、私は、八戸市の納税者ではないので、無責任かも知れないが、実際に本を手に取って確かめ、買うことができる環境にあることは、Intellectual Life「知的生活」にとって不可欠だから、八戸ブックセンターを継続してほしいと思う。
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